第5日目 ヴィンロンで何もしない

ヴィンロンには朝市があるというので6時に起きて市場に向った。

市場は朝の仕入れがひと段落したところだったが、まだまだ活気がある。採れたての川魚やイカが巨大な入れ物に入れられて大量に売られている。水産物は新鮮さが重要だ。採れたての魚達はまだまだ生きていおり、驚かされた。ヴィンロン市場の主力商品は水産物らしく売り場面積のかなりの部分を占めていた。

水産物以外にも豚やアヒルが売られていた。

生きている豚が市場で売られているのを見たのはは久しぶりだ。アジアの市場は生き物の取引を間近で見る事が出来るので面白い。

朝市では動物以外にも穀物や靴や服やいろんな物を売っている。フルーツや穀物や靴や服など水産物や動物以外の売り物もたくさんあるのだが、やっぱり見学して面白いのは水産物売り場だ。

他の売り場に比べると活気が違う。メコンデルタの市場なのだから水産物売り場の活気があるのは当たり前だろう。

そんな水産物に囲まれた売り場に可愛い女の子が紛れ込んでいた。きっと、母親が魚を売っているので付いてきているのだろう。この子も数年したら立派に母親の後を継いで魚を仕入れて売りさばくようになるのかもしれない。

朝市の雰囲気を堪能した後にメコン川を眺めていると渡し舟の船着場を見つけた。

どこに行くのかよく判らないが、たくさんのバイクが乗り込んでいるので変なところには行かないだろうし、今日はヴィンロンにもう1泊することは決めているので時間もある。ちょっと冒険できると思い渡し舟に乗り込んでみた。

船はゆっくりとメコン川を渡っていった。

船の上から見るメコン川も岸から見るのと同じように濁っていて、いろんなものが流れている。川の上から空を見上げると建物や木などの障害物が無いので空が広く綺麗に見える。のんびりと船の旅を楽しんでいる余裕も無く、あっという間に対岸の島に到着した。島の名前はアンビン島と言うらしい。

船着場にはお店が数件あったが、それ以外はジャングルが広がっている島だ。とりあえずは一本道があったので歩いてみる事にしたが、俺の予想以上に何もない。

何か集落があるかと思って歩いていったが、まったく見つからない。島の中も小さな運河が通っているらしいが島の住人ではない俺には良く判らない。島の奥の方には教会や小学校があったので、思ったよりも住人は多いみたいだ。

アンビン島を散策している途中で民家の犬に吼えられた。どうやら犬の縄張りに入ってしまったようだ。走って逃げると追いかけてくるし、犬は放し飼いで自由だし、ちょっと困って、犬とにらみ合っていると住人に助けてもらう事が出来た。もう少し島を散策したかったが、犬に噛まれるのは嫌だったので、これ以上奥に行くのはやめた。

1時間ぐらいアンビン島を冒険した後は同じ渡し舟でヴィンロンに戻ってきた。

昼飯を食べてシャワーを浴びてから午後の散策に出かける。新市街の方に行ってみると、今日は休日なのか判らないが街のいたるところにベトナムの国旗がはためいていた。それだけでなんとなく異国情緒があって楽しくなる。ヴィンロンの街は近代的だがホーチミンと比べる地方都市の雰囲気を感じる。それにしても、街中を走っているバイクはやっぱり圧倒的に多い。

新市街らしいところを散策していると、お洒落な靴屋をみつけた。店番をしている女の子もお洒落でバッチリメイクをしていた。

なんとなくそんな近代的なベトナムの一面をみる事が出来た様だ。店番の女の子に許可を貰って店内の写真を撮らせてもらった。

更に新市街を歩いていると、コーヒーショップの屋台がありちょっと休憩した。午後の日差しはキツイので砂糖のたっぷり入った甘いアイスコーヒー飲んで体力を回復させる。地元の兄ちゃん達も休憩していて、英語は通じないがなんとなくコミュニケーションを取る事ができて楽しいひと時を過ごす事が出来た。

アイスコーヒーで体力を回復させたあとに面白いものを見つけてしまった。写真館を見つけたのだが壁の全面に巨大な結婚記念の写真が展示してあった。

写真館の全面に巨大に引き伸ばした結婚記念のポスター写真が何枚か張られている。しかも、その写真の完成度となりきり度に俺のテンションが上がってしまう。ホーチミンの博物館で結婚の写真を撮っていたのはこういう事だったのかと俺の頭の中で繋がった。

たぶんベトナムでは結婚の写真を撮るのが流行っているのだろう。そして、完璧なメイクと衣装に決めポーズで写真を撮り、どっぷりと二人の世界に浸った写真を仕上げる事にエネルギーが注がれているのだろう。ちょっと驚いたが、興味深いものを見る事が出来て良かった。

新市街を散策して旧市街に戻ってきた。

ちょうど午後の最も暑い時間なので人通りも少ない。俺も歩き疲れたので少し休むことにした。近くに公園があったのでそこでのんびりとメコン川の流れを見ながら贅沢な時間を過ごす。川の近くは風が吹いていて少しだけ涼しい。

メコン川のほとりの公園でのんびりとした。

学校の終った学生達も公園で何かして遊んでいるようだ。なんとなく贅沢な時間が流れている。ヴィンロンにはツアー会社が数軒あるようで、メコンデルタツアーも開催されているみたいだ。だが、今の俺はメコンデルタのジャングルと土産物屋をルートに沿って周るツアーにはあまり興味を惹かれない。

午後の太陽を受けながらメコン川のほとりの公園でのんびりしているとトカゲが現れた。

よく見ると公園内にはトカゲがたくさんいる。トカゲ達も太陽を浴びているようだ。面白そうなのでトカゲの写真を撮ろうと思ったが、近づきすぎると走って逃げてしまう。木に登ったり茂みに隠れてしまうと写真は撮れない。そのうちにトカゲとの距離の取り方が判ってきて、写真に収める事が出来た。

公園には誰も乗っていない船が停泊していた。

どうやらこの船はメコン川ツアー用の船らしい。午後からのツアーは無いようで、この船の今日の仕事は無かったらしい。俺が船の周りで写真を撮っていても、誰も何も文句を言わない。きっと、観光会社の人たちもこの時間帯はやる気がないのだろう。

ヴィンロン市場の周辺に来ると、欧米人のツアー観光客の集団に出会った。

土産物のベトナムの帽子を被って、カメラをさげて、リュックやポーチを肩にかけて典型的な観光客だ。ちょっと、俺のテンションが上がってしまい、すれ違いざまに後姿の写真を撮ってしまう。

ホーチミンではたくさんいた欧米人観光客もロンスエンやヴィンロンではほとんど見ない。ヴィンロンのような観光のメインではない場所まで欧米人ツアーが来るのだから珍しいツアーなのだろう。アジア人ばかりのヴィンロンの街を歩く欧米人観光客がいる風景は異質な感じで面白い。

ヴィンロンの街を1日中何もせずに歩き回りながら、楽しんでいるうちに夕焼けになった。

荷物はほとんど持たずに歩き回っているだけだが、かなり疲れてしまった。綺麗な夕焼けをバックにして日常生活を営んでいる現地の人達がバイクに乗って帰路を急ぐ。そんな日常の1日を歩きまわってヴィンロンの街を見る事が出来て楽しかった。

夕食を食べてからホテルに戻って最後の夜はゆっくりと休もう。

今日は旅の最後の夜だ。あっという間の旅でとても時間が足りない。

ようやく、ベトナムの物価もなんとなく判ってきて、ぼられているかも知れないけど自分なりの価格基準が出来てきた。それなのに明日の夕方には空港に行って帰国だと思うと淋しくなる。酷使してきたガイドブックはカバーがボロボロになっていた。

地元の図書館で借りてきたガイドブックだったのでブックカバーは広告のチラシを使っている。思ったよりもステキなチラシのブックカバーで満足していたが、旅の終わりと共に限界が来たらしい。

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