第4日目 ロンスエンの観光

今日は朝からロンスエンを観光して、昼過ぎにはヴィンロンに移動する予定だ。

昨日の夜に洗ったTシャツは既に乾いていた。やっぱり南国の熱気とファンの威力は強力だ。パッキングを済ませて荷物をまとめてから、ロンスエンの観光に出発する。ガイドブックにはトンおじさんの生家が近くにあると書いているので行くことにした。

市場の隣の船着場から渡し舟に乗って行くらしい。船着場では小船に乗ったおっちゃんたちが早朝の収穫物を市場に下ろしたあとらしく、くつろいでるようだった。ちょっと船着場を見学しているうちに渡し舟がやってきた、あまりお客さんが乗ってこないまま、渡し舟はトンおじさんの島に向って出発した。

トンおじさんが生まれた島は客引きも殆ど居ないのんびりとした島だった。

船着場に到着し船を降りると、船着場の周囲に店屋が数件あるだけだ。少し道を歩くと、その先は何も無い一本道が続いていた。どうしようかと考えている俺を見かけてバイタクのおじさんが声を掛けてきた。天気が良いので田舎の島をのんびりと散歩するのも気持ちが良いと思ったが、午前中にはロンスエンを出発したい俺にはのんびりと田舎の道を散策している時間がない。トンおじさんの家の場所も判らなかったので、声を掛けてくれたバイタクに乗せてもらい、トンおじさんの生家に向った。

トンおじさんとはベトナムの2代目の首相なのだそうだ。ベトナム国民から慕われた人だとガイドブックに書いてあった。

ガイドブックにはトンおじさんと記載されているのだが、どうもトンおじさんというネーミングに違和感を感じてしまう。きっと、英語の表現をそのまま日本語訳したのだろう。どうせなら、直訳ではなくもう少しセンスの良いネーミングを付けて欲しかった。ガイドブックを見る度になんとなく違和感を感じる。

とにかく、ロンスエンの田舎で生まれたトンという青年がベトナム戦争で活躍して勝利を得た後に2代目の首相にまでなって、国民にとても慕われたのだ。そんな偉人がロンスエンの片田舎から輩出したのだから郷土の誇りだろう。生まれた場所が観光名所となるのは理解できる。

生家は既に誰も住んでおらず、当時の雰囲気を再現しながら一般開放されていた。生家の隣は記念館になっていて巨大な公園が併設されて綺麗に整備されていた。俺のほかに観光客は来ていないらしく、なんとも静かな記念館だった。

トンおじさんの生家から船着場まで、帰りは歩いて行く事にした。

バイタクで走っている途中に面白そうな場所が何箇所もあったのでじっくりと見たかったのだ。その1つがひよこや鶏の放し飼いだ。島に住んでいる人が鶏を放し飼いで育てているのだろう。放し飼いでもひよこや鶏が盗まれるような事はないようでステキだ。

ある程度成長したひよこ達が庭や道路を歩き回って虫を探していた。見ていると臆病なひよこや、好奇心旺盛なひよことか、個性があって面白い。

道路の端のほうに、何かよく判らないものが干してあった。

よく見ると、椰子の実の殻のようだ。かなり干からびた物や、まだ乾ききっていない物まである。並べて干してあるので、誰かが何かに使うために干したのだと思うのだが、いったい何のためにどうやって使うのかまったく判らない。地元の人が通りかかったら聞いてみようと思ったのだが、結局誰も通らなかった。

その後も、のんびりと船着場まで歩いていき、島の雰囲気を十分に味わう事が出来た。トンおじさんの生家と記念公園以外は何もない島なのだけれども、何もないのがこの島の良さなのかなと思う。

もう一度渡し舟に乗って、ロンスエンの町に戻った。

川の上から見るロンスエンは思っていたよりも大きな建物があり都会のイメージだ。英語はあまり通じないのだけれども、この辺りの中核都市なのだと実感した。

川の流れは思ったよりも速く、渡し舟はあっという間に下流に流されていく。斜め上流に船首を向けて進んでいくと、ちょうど良いタイミングで船着場に到着した。船頭の腕が良いのだろう。

時間に余裕があるみたいだったので、ロンスエンではもう1つぐらい観光地を周れそうだ。俺が興味を持っていたのはアジャン省の博物館だ。船着場から少し歩くと行けるみたいなので、とりあえず行ってみる事にした。

ガイドブックの地図を頼りに10分ぐらい歩くと博物館に到着した。博物館の建物は思っていたよりも近代的で大きかったが、展示物はそれほど多くはなかった。

博物館を見学したあとは急いで宿に戻ってシャワーを浴びて、チェックアウトした。この調子で出発できればヴィンロンまでは今日中に到着出来そうな雰囲気だ。バックパックを背負ってロンスエンのバスターミナルに到着すると、30分後にメコン川下流最大の都市カントー行きのワゴンが出発するらしい。久々に定員オーバーのギュウギュウ詰めのワゴンに乗ってカントーに向った。

カントーにはお昼頃に到着した。時間があればカントーの観光をしても良いかと思ったが、すぐにヴィンロン行きのバスが出発するというし、カントーにはあまり魅力を感じなかったので、すぐにヴィンロン行きのバスに乗ってしまった。

ヴィンロンには2時過ぎに到着する事が出来た。とりあえずは宿を探す。そのついでに街の散策もする。ヴィンロンには大きな市場があり、活気があって面白そうだ。ロンスエンよりもホーチミンに近いせいか街中で英語が通じる。言葉が通じるというのがとても楽だ。

宿は市場から近い場所に決めた。少し値段は高いが、立地条件が良かったので満足だ。ヴィンロンには昔からの市場以外にもショッピングスーパーがあった。かなり都会のイメージだ。

ショッピングスーパーで職場のお土産にお菓子を買ったら、見た事のあるキャラクターが印刷された袋に入れてくれた。世界中で有名になるという事はこういう事なのだろう。高度経済成長期の日本でもネズミのキャラクターを無断で使用していてた地方都市の商店街等は珍しくはないだろう。時代と場所が変わっても人間の考える事は同じような事ばかりなのだろうなと思った。

街を散策していると排気ガスの臭いが町全体を覆っているような感じだ。バイクや車の交通量がかなり多いので当然だろう。

本格的なヴィンロン散策は明日しようと思っているので、今日は夕暮れのヴィンロンを少しだけ散策する事にした。のんびりと歩いていると、運河に掛かる橋から綺麗な夕日を見る事が出来た。ステキな風景だ。

夕日が沈んでからは雨が降ってきたので、慌てて宿に戻った。雨はかなり激しくスコールの様だったが2時間ほどですっかりやんでしまった。雨上がりにカメラを持たずに夜の街を散策した。移動式遊園地のようなもの近くに出現していてた。昔のデパートの屋上のような雰囲気でどことなく懐かしかった。

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