第2日目 ホーチミン市内観光

ベトナムの最初の朝は7時過ぎに起き出して行動開始する。俺に与えられた旅の期間は1週間しかない。ダラダラとしている暇はないのだ。サービスで付いている朝食はパンとジャムとコーヒーだった。朝食を食べた後は荷物を宿に残して市内散策に出発だ。 喧騒の中のベンダイン広場 チェックアウトは10時なのでそれまでに戻って来る事にして朝のベトナムを散策する。ベトナムの朝は活気があって気持ちよい。まずはもう少し値段の安い宿を探す事にした。近隣を散策しているとバイタクに乗った兄ちゃんが声をかけてくる。どこに行くのだとか、何を探しているのかとか、俺を客にしようとして声をかけてくるのだ。今の俺はバイタクに乗る必要がないので断るのだが、彼らも引き下がららずに声を掛け続けてくる。このウザイ感じが旅の醍醐味だ。迷惑で疲れるのだけれども客引きが来ない街はなんだか物足りない。次から次へと声を掛けてくるバイタクの兄ちゃんを振り切りながら宿を探していると、ブイビエン通りの近くに良さそうな宿があった。中を見せてもらったが問題のないクオリティーだし初日の宿の半分の値段だ。疲れてきたので今日の宿はそこに決めた。
新しい宿から少し歩くとベンダイン広場に到着した。ベンダイン広場の周りはバイクや車やバスが喧騒をたてて走り回っている。朝の通勤ラッシュのようだ。交通ルールなど関係なくクラクションを鳴らしながら走っている様に見えて、事故を起こす事無く走っているのだから不思議だ。
9時前のベンダインマーケットはまだオープンしていない様でシャッターが開いている店はほとんどない。ベトナムの中心的な観光地になっているベンダインマーケットなのだから、お店が営業している時間に出直すことにしよう。
チェックアウトの時間が近づいてきたので初日の宿に荷物を取りに戻り、新しい宿に移動して本格的なホーチミン市内観光に出発することにした。

ホーチミンの街が本格的に営業を開始するのは10時ぐらいからだった。まずはベトナム独立の象徴のような統一会堂を見学する事にした。統一会堂の近くには戦争証跡博物館があるので一緒に見る事が出来そうだ。ベンダインマーケットから統一会堂まではホーチミン市内散策を兼ねて歩いていく。統一会堂が近づいてくるとバイタクの客引きが待ち構えていて、統一会堂は休みだからもっと良いところに乗せて行ってやろうと言う。ガイドブックによると今日は定休日ではないはずだ。とりあえず自分の目で確認するのが一番確実だ。
統一会堂の正門に行ってみると、本当に休みで入れないようだった。どうやら、海外から高官が来ているらしく、接待のために統一会堂を使っているので4日ほど一般開放を中止しているらしい。ちょっと残念だが、仕方がない。門の柵の間から建物正面の写真を撮って諦める事にして、戦争証跡博物館に向った。ここにはベトナム戦争記録や兵器や軍事作戦のシナリオ等が展示されていた。どこの国でも戦争関連の博物館は悲しい写真であふれている。

次はホーチミン市博物館に行く事にした。戦争証跡博物館からホーチミン市博物館まで歩いて15分ほどだ。歩いている途中で観光客らしいカップルに道を聞かれた。アジア人のカップルだったが、道を聞くのなら現地に住んでいる人に聞けば良いと思うが、観光できている俺に道を聞いてきた。俺で判る事は教えてあげれるが、観光客の俺に道を聞いてきた時点でちょっと怪しかった。そのうちにどこの国出身かなどの日常会話になっていった。積極的に俺に話してくるのは女性のほうだ。なんとなく詐欺の香りがする。
俺は早く話を終わりたかったのだが強引に彼らが話を続けるので聞いてみると、彼らのイベントのパーティーが今夜あるので、そのパーティーに俺を誘いたいみたいだった。しかし、俺は夜に遊びに行くのも面倒だし、彼らが面白いというイベントも魅力的には聞えなかった。それでも、彼女が執拗にパーティーに誘うので、断る理由を探しているうちに疲れてきた。しかも、お腹も減ってきた。さらに、俺はこれから博物館を梯子しないとならないのだ。忙しいのだ。時間がないのだ。パーティーには行かない事を何度も繰り返し伝えたら、ようやく彼らも諦めたようでパーティーの案内が書かれた名刺を置いて去っていった。どうせパーティー詐欺の誘いなんだろうけど。
詐欺師っぽい2人組みの話には疲れさせられたが、ホーチミン博物館は簡単に見つける事ができた。博物館に入ってみると思っていたよりも品揃えが良いので嬉しくなった。古代から現代までの品が展示されている。その中でも木造のコーナーが俺の心を引きとめた。面白い表情の木造たちがおもむろに展示されている。その中でも男女カップルの木造は格段に面白い表情をしていて笑える。これを作った人たちはどういう価値観をしていたのだろう。

ホーチミン市博物館は建物も綺麗でステキだ。しかも観光客に人気がないらしく、ほとんど人がいないのでゆっくりと展示品を見て周ることが出来る。だが、その中で結婚用の撮影をやっていたので驚いてしまった。 結婚するカップル 博物館の営業中に普通に撮影をするなんて、ちょっと不思議だなと思ったが、どうやら、個人的な結婚写真を撮影しているようだ。最初はプロの撮影だと思ったのだけれども、それにしては規模が小さいような気がする。
確かにこの博物館は建物だけでもステキなので撮影にはちょうど良いだろう。もし、普通の人が結婚写真のために博物館を撮影場に選んで撮影しているのであれば、気合が入りまくっている。カメラマンにスタイリストに照明さんまでスタンバイしているのだ。2人とも決め顔で何枚も写真を撮り続けている姿はちょっと面白くもあり、笑ってしまった。
結局、雑誌か何かのプロの写真撮影なのか、金持ちの個人的な結婚記念の撮影なのか分からなかったが、ちょっと意外な撮影会に立ち会う事ができて、ホーチミン市博物館は予想外の面白い場面を見る事が出来た。

博物館を見ている途中から空腹感を感じていたのだが、あまり気にしないようにして観光を優先させたかったのだが、そろそろ本格的にお腹がすいてきた。何かを食べたいと思いつつも、良さそうな店を探せずに街中をさまよってしまっている。とりあえずは次の目的地に向いながら食べ物を探す事にした。ホーチミン市博物館からホーチミン市人民委員会に向ったが、人民委員会は観光客に開放されていないようだ。残念だが、建物だけを見て諦める。人民委員会の前の公園のホーチミン像と一緒に写真を撮る。ちなみに、ホーチミンが人の名前だという事実はこの場所で知った。
そのあとはドンゴイ通りを歩く。ドンゴイ通りはホーチミン市で一番の目抜き通りらしいので、そこを歩くだけでも面白いはずだし食べ物屋もあるはずだ。気が付くと手持ちのベトナムドンも少なくなってきた。博物館の入場料などでお金を払いすぎたようだ。まずは両替をしなくてはならない。
ドンゴイ通りの観光案内所で両替を頼んだが出来ないらしく、近くの両替屋を教えてくれた。観光案内所で教えてくれた両替屋を探すが、よく判らない。そのうちにバイタクの兄ちゃんにも声を掛けられた。腹が減って疲れている俺をさらにイラつかせてくれる。

このイラつきの根本原因は腹が減っているからだ。何か食べ物を食べたいのだけれども、なかなかみつからない。せっかくならベトナムっぽい食べ物を食べたいが、ドンゴイ通りの周辺では俺の心に響く食べ物屋を探せない。だが、その前に銀行で両替をしなくてはならない。やらなければならない事が増えてきたし、バイタクの兄ちゃんは振り切れないし、俺をイラつかせる事が盛りだくさんになってきた。
とりあえずはお腹が空いているからイラつくのだ。どこかで昼飯を食べたいのだが、その前に両替をしなければお金がない。両替所を探していると見つからないし、バイタクの兄ちゃんに絡まれるしでイラついてしまう。負の堂々巡りだ。
負の連鎖を断ち切らなければならない。ドンゴイ通りで銀行を見つける事ができたので両替をする。それから適当に食堂を探す。地元のサラリーマンっぽい人達が路地から出てきているので、そこに入っていくと食堂だった。なんとなく隣の人が食べている物を注文したら、当たりだった。美味しかった。後で調べてみるとティットヌォンとか言う麺類らしいが、美味しかった事以外は良く判らない。
とりあえず空腹が満たされた事でイラつきもどこかに消えてしまった。おまけにバイタクの兄ちゃんも消えてしまった。まずは宿に戻って食後の休憩を取る事にした。それから午後の観光に出かける事にする。

午後の日差しはちょっとキツイ。宿の近くで帽子を買ってから出発する。ベンダイン広場ではバイクがカオスのように走っている。その中からバイタクを選んでちょっと遠い歴史博物館に連れて行ってもらう。とりあえずは値段交渉をすると半額になったので、その値段で歴史博物館に向った。久しぶりのバイクは気持ちが良い。途中でバイタクの兄ちゃんは知っている日本語を俺に連呼してきた。良い奴みたいな感じだが、そのうちにエロイ日本語を教えてくれと言ってきたので、たくさん教えてあげた。
歴史博物館に到着すると兄ちゃんは自分のノートを俺の見せてきた。そこには日本語や韓国語やヘブライ語で書かれた感謝の言葉等が書かれていた。俺にも何 か書いて欲しいような事を言ったので、俺が教えたエロイ日本のリストを書いてあげた。彼はどれぐらい覚えて使いこなせるだろうか。ちょっと興味がある。

歴史博物館は思っていたよりも迫力があった。場所が中心部から遠いのでバイタクを使わなければならないのが面倒だけれども、見ごたえは十分だった。博物館の中もかなり広くて、普通に見るだけで2時間ぐらいはかかってしまいそうだ。団体観光客とぶつかってしまって博物館内は少し混んでいたが、大満足だ。
歴史博物館の隣には動物園やフンブオン廟があって、家族連れや観光客が来ていて賑わっているようだ。フンブオン廟がどういうものなのかよく判らなかったが、行ってみてもよく判らなかった。それでもそれなりに楽しめた。

歴史博物館の次はサイゴン大教会に行く。教会までちょっと距離があったのだけれども、歩いて行く事にした。サイゴン大教会は16時には閉まってしまうので、その前にちょっとだけでも内部を見たいので急いだ。かなり早足で歩いたので、15時50分にはサイゴン大教会に到着できた。内部も見る事が出来たのだけれども、中南米に星の数ほどあった教会と大差の無い普通の教会だった。キリスト教圏ではなく、ベトナムのホーチミンにこれだけの教会があるという事実が貴重なのだろう。
観光客達もちらほらと記念撮影しているので、俺も負けずに記念撮影をする。

サイゴン大教会の次は宗教のチャンポンでサイゴンセントラルモスクに行く。サイゴン大教会は荘厳な感じだったが、サイゴンセントラルモスクはビルの谷間でこじんまりとしている。
そのせいか、久しぶりのモスクはなんとなく落ち着く。お祈りの時間ではなかったので、のんびりとくつろぐ事が出来た。手と足を洗ってから、モスクに入る。
しばらく、のんびりとモスクの雰囲気を味わう。都会のど真ん中なのにモスクの中は外の喧騒から離れていて、静かで気持ちが良い。

モスクでのんびりとしたあとはサイゴン川を眺めに行く。ガイドブックにはサイゴン川の川岸が公園になっていると書いてあったのでそこに行ってみた。いろいろな物が流れているサイゴン川 さすがに、ホーチミンのど真ん中を流れているサイゴン川は汚い。川に近づくだけでなんともいえない臭気が漂ってくる。川は濁っているし、流木などいろんなものが流れている。かなり巨大なやしの木っぽいものも流れているし、上流では何があったのだろうかと考えてしまう。ちょっと恐ろしくなる。
川はこれだけ濁っているのに、空は綺麗で抜けるようにすっきりとしていて対照的だ。

サイゴン川の川岸の公園で面白いゴミ箱を発見した。ペンギンのゴミ箱だ。こういうステキな感覚をベトナム人が持っているのに驚いてしまったし、嬉しくなってしまった。こんな表情のペンギンのゴミ箱を見てしまったら、ゴミだらけのサイゴン川も可愛く見えてしまう。テンションが上がってしまっても仕方がないだろう。
ペンギンのゴミ箱を見つけて独りで盛り上がった後に冷静になって公園の中を見渡すと、ペンギンのゴミ箱は公園内に数台設置されているようだ。再度テンションが上がる。こういう意外な発見があるから、旅は辞められない。

サイゴン川から宿に戻る途中に若者達で物凄く混んでいる場所があった。なんとなく観察してみると、学校の前らしい。俺が通った時はちょうど下校時刻で込み合っていたみたいだ。生徒を迎えに来た親や兄や自分の自転車で帰る学生や、学生達を相手に駄菓子を売っているおばちゃんまでいて、道を通るのも難しいほど学生達がたくさんいる。ベトナムの学校の下校時間はこんな感じなのだろう。そんな場面を見る事が出来るだけで嬉しくなってしまう。
精力的にホーチミン観光をしたので疲れてしまった俺は生徒達の間を抜けて宿に戻った。夕方は宿でのんびりと休息を取る事にした。日が暮れてから夕食を食べに行く。夕食はベンダイン市場の屋台がお勧めとガイドブックに書いてあったので行ってみたが、ツーリスティックに成りすぎていて興醒めしてしまった。お客は外国人ばかりだし、ツアーガイドが大きな顔をしているし、どこの店も同じようなものばかりだし、ベンダイン市場の屋台で食べる気がしなくなってしまった。適当に屋台を見つけて適当に食べて帰ってきた。結構美味しかった。