出発当日 パッキングと旅の計画

出発の飛行機が夕方だったのと、パッキングが嫌いで後回しにしてしまったので、出発当日まではほとんど何も準備をしていなかった。数日前からガイドブックを図書館に借りに行ったり、航空券を手配したり、持っていく物リストを作ったりはしていたのだが、実際のパッキングや荷物の準備は手を付けていなかったのだ。

出発当日は時間に余裕を持って朝早く起きて準備を開始する。パッキングにはもっと時間がかかるだろうと思っていたが、予想よりも早くパッキングが終ってしまった。空港に行く途中でハプニングがあるかもしれないので、ちょっと早いが空港に行く事にした。途中の電車の中でベトナムのガイドブックを本格的に読みはじめ、面白そうな所を探す。ベトナムは思っていた以上に見所がありそうだ。まだ、旅のプランを立てていないので、これから、実際に行くところを絞り込むのは大変だ。ガイドブックを読んでいるうちに成田空港に到着したのだが、飛行機の出発までは3時間以上ある。その間に、ガイドブックを読んで面白そうな場所を探さなくてはならない。

飛行機のチェックインを済ませて、空港内を軽く見て周ったが他に何もする事が無い。日本円も帰りの電車賃ぐらいしか持っていないので、買い物も出来ない。出国手続きを済ませてゲートを通り飛行機の出発を待つ事にした。ガイドブックを参考に明日からの行動プランを考えながら飛行機の出発時間を待つ。待合室が少し寒いのはベトナムの気候に合わせた俺の服装のせいだろうが、荷物を出来るだけ少なくしたいので仕方がない。そうしているうちに飛行機の出発時間になった。

飛行機はかなり空いていた。隣は空席だったので広いスペースで快適な空の旅になりそうだ。機内サービスの映画やワインを楽しんでいるうちにベトナムに到着した。ベトナムの空港に到着すると熱気がこみ上げてくる。久しぶりに南国の空気を吸ってワクワクしてしまう。テンションが高くなるのを感じながら入国を済ませた。税関には銀行があるのである程度のベトナムドンを手に入れる。

銀行では提携タクシーのチケットも売っているが、安心できる分だけ割高な料金設定と相場は決まっている。銀行の提携タクシーなど使わずにゲートを出ると、市中のタクシーの客引きたちが待ち構えていた。

ベトナムの空港に到着したのは23時半を過ぎてた。路線バスを探してみたのだが、夕方で終ってしまったらしい。この時間だとタクシー以外に都心に向う交通手段はない様だ。仕方がないので客引きたちの中から優良なタクシーを捜そうとするが、空港で客待ちしているタクシーは全てが怪しく見えてしまう。久しぶりの旅で初めてベトナムの空港に降り立った俺の先入観としては当然の反応だろう。仕方がないのでちょっと割高でも安心代と思って、銀行提携のタクシーチケットを買う事にした。ゲートの警備員に事情を話して銀行に戻ってタクシーチケットを買う。そのまま係員に誘導されてタクシーに案内されて、そのまま乗せられてしまった。とりあえずは銀行と提携しているタクシーなので、騙されることはないだろう。

ガイドブックには安宿が集まっているのはデタム通りとベンダイン通りの周辺だと書いている。ホーチミン市の中心部にも近いし、今日はその近辺のホテルに事に決めて、タクシー運転手に告げた。運転手は俺のガイドブックを手にとってなんとなく場所を確認したが、ちょっと不安そうに空港を出発した。ホテルまでは運転手との談笑の時間だ。運転手は俺の明日の予定などを聞いてくる。俺に予定が無ければ自分が提携しているツアーに参加させたい魂胆だろう。こういう時はベトナムに住んでいる友達と会う事にするのが効果的だ。その後は運転手に質問させない様に俺が質問する。運転手の家族構成や子供が何人いるかなどを聞きながら、ベトナムの物価や簡単な挨拶などの基本情報等も収集する。せっかく割高なタクシーを利用しているのだからこれぐらいは利用しても罰は当たらないだろう。

軽快にタクシーはベトナムの市街地を進んでいたが、途中で運転手が物凄くミスったようなリアクションをした。道路が工事をしていて迂回しなければならないらしい。運転手は道路工事をしていて迂回しなくてはならないからその分の料金を更に上乗せして欲しいと言ってきた。もちろん運転手は道路工事をしている事は知っていて、わざと工事している道を選んだのだろう。観光客から上乗せ料金を貰いたいために。彼の使うお決まりのパターンだろうが、そんな事は俺も織り込み済みだ。上乗せ料金を払わないための戦闘準備は出来ている。ここから、粘着力の強い交渉が始まるのだろうと思ったが、俺がNOと言うだけで運転手は諦めてしまった。ちょっと拍子抜けだったが、それから沈黙の時間が10分ほど経過した頃にベンダイン通りに到着した。運転手は俺が希望する場所に降ろしてくれて笑顔で走り去っていった。なんだか、ささくれた旅行者に成ってしまった自分がちょっと嫌だ。

久しぶりの南国の夜の街はバックパッカーの香りが漂ってくる。街を歩いているだけで嬉しくなる。既に日付が変わっている時間なのだけれども、危険な空気 は感じない。適当なホテルを探して初日の宿にした。比較的綺麗な宿で料金もちょっと割高だが、疲れていた俺はシャワーを浴びてすぐに眠りについた。

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