海の世界と遺跡の世界

これから俺が行くウティラ島は安い値段でダイビングライセンスを取る事ができると云うので有名な所である。最初、ダイビングなど俺には関係の無い物だと思っていた。が、旅の途中で出会う人達の多くがダイビングライセンスを持っているのだ。彼らの話しを聞いているうちに、ダイビングライセンスは簡単に取れてしまいう物だと云う事が解ってきた。

その話しの中で出てきたのがウティラ島である。この島では世界でも3本の指に入るぐらい安くダイビングライセンスを取る事ができるらしいのだ。せっかく中米まで行くのだから、ウティラ島でダイビングライセンスを取ってしまうことにしたのだ。安い値段とカリブ海の綺麗な海は魅力的である。

そこで俺は南米を北上している時からウティラ島とダイビングライセンスの情報を集めながら旅をしていた。俺の欲しいライセンスを取るにはだいたい1週間ぐらいかかるらしいので、ウティラ島の滞在期間は1週間ぐらいの予定にした。

ラ・セイバの中心部からタクシーでフェリー乗り場にむかう。乗り場には欧米人の観光客がたくさんいた。俺は欧米人に混じってフェリーのチケットを買って、フェリーが出発するのを待っていた。すると、1人の黄色人種の男の子が俺に向って「アッサラーム・アレイクム」と声をかけてきた。これはアラビア語の挨拶である。中米のスペイン語圏でアラブ人ではなく黄色人種の男の子からアラビア語で挨拶をされたのだ。ビックリである。俺には状況が良く理解できなかったのだが、とりあえず「アレイクム・アッサラーム」とアラビア語で挨拶を返す俺。しかし、俺には彼が何者なのかサッパリわからないので唖然としてる。

すると今度は、日本語で「おはよう」と挨拶してきた。そして、彼が何者なのかと言う俺の質問に日本語で答えてくれた。なんと、彼はエジプトで会った事があるヒロミ(仮名)君だったのだ。俺は彼のことを忘れていたのだが、ヒロミ君は俺のことをしっかりと覚えていてくれたのだ。

彼もこれからウティラ島でダイビングをする予定らしいのだ。そんな訳で俺はヒロミ君と一緒にウティラ島に行くことにした。ヒロミ君はダイビングライセンスを持っているのですぐにダイビングができるのだが、俺はダイビングスクールに入らなくてはならないので、ヒロミ君と一緒にダイビングは出来ない。が、食事をしたり今までの旅の事を語り合ったりして楽しい夜になった。ヒロミ君もウティラ島のあとは遺跡を見ながら北上していくのだそうだ。

ウティラ島はダイビングのための島になっている。この島にやってくる人達はダイビングが目当の人達ばかりだ。ヒロミ(仮名)君と俺も他の人達と同じようにダイビングが目当である。

俺とヒロミ君はダイビングの前に綺麗な海でシュノーケリングを楽しむことにした。海は綺麗でとても気持ちがいい。天気も良くて最高である。2人で時間を忘れて遊んでしまった。

次の日から俺はダイビングライセンスを取るためにダイビングスクールで勉強をすることになった。分厚い教科書を渡されて、それを全部読むように言われた。俺はホテルに戻ってからも教科書を読んで勉強する。

ヒロミ君は俺が勉強している間にダイビングをしている。夕食の時に海の世界の話を聞いた。ウティラ島の海はとても綺麗でお魚もたくさんいて、感激だったと話してくれた。さすが、世界に名高いカリブ海に浮かぶ島だ。

ヒロミ君は充分ダイビングを堪能して、ウティラ島を後にした。俺はライセンスを取るためにダイビングスクールに入ったので1週間はこの島に滞在する。ヒロミ君とはここでいったんお別れである。これから先はお互いに似たようなルートなので、きっとメキシコ辺りで再会できるだろう。

俺のダイビングスクールは午前中は教科書で勉強して、午後から海に潜りに行く。生徒は俺を含めて8人。少数精鋭で教えてくれる。授業は英語でおこなわれるが、俺には日本語の教科書を与えてくれた。日本語のほかにハングル語やスペイン語の教科書もあるらしい。

午後からのダイビングは新しいことだらけで面白い。最初の2日間ぐらいは水深の浅い所で機材の使い方を勉強するだけだったがそれも新鮮で面白かった。そのうちに綺麗な珊瑚や魚が見えるところに連れて行ってもらえるようになった。海の中を泳ぐ気分は空を飛んでいるような感覚なのである。とても不思議な感覚で別世界にいるみたいだ。とても気分が良くて感激である。

1週間ほどで、俺はダイビングライセンスを手に入れた。これで俺も海の世界に仲間入りすることが出来た。この1週間はほとんど毎日海に潜っていた。ウティラ島のダイビング生活は大変満足することが出来た。

ウティラ島を出発した俺はマヤ文明の遺跡を見ながらメキシコシティーまで北上する予定だ。ウティラ島から船で、ラ・セイバに戻る。ラ・セイバから最初に目指すマヤ遺跡はコパン遺跡である。コパン遺跡は国境近くにある遺跡である。俺はコパン村を目指して移動する。俺にとってはコパン村がホンジュラス最後の宿泊地になるだろう。コパン村のすぐ先に国境があり、国境を越えるとグアテマラである。

朝、コパンの村に着いてホテルを探しながら村の中を歩いていると、ジンバブエで会ったシンタ(仮名)さんが道の向こうから歩いてきた。こんな所で驚きの再会である。シンタ&雅美(仮名)さん夫婦とはメールのやり取りをしていたので、2人がメキシコに来ていて、南下しながら旅をしていることは知っていた。が、彼らの予定では今はグアテマラのアンティグアという町にいるはずなのだ。それが、こんな所でいきなり再会してしまったので驚いた。

雅美さんは体調を崩したので、つい先日、アンティグアから日本に帰ったのだそうだ。シンタさんは稲田(仮名)君という男の子と一緒にコパンに来ていた。2人はこれから遺跡を見学しに行こうとしていたところで俺と出会ったのだ。まさに偶然である。

せっかくなので、3人で一緒に遺跡に行くことにした。俺のホテルはまだ決まってなかったので、シンタさん達と一緒のホテルに泊る事に決めた。

ここは俺にとって最初のマヤ遺跡である。遺跡は公園の様になっていて、とても広い。敷地内に色々な遺跡や神殿や石柱が点在している。感激である。3人で遺跡の中を歩きまわった。コパン遺跡には洞窟があってその中に入る事も出来た。3人とも遺跡好きだったようで、あっという間に時間が過ぎてしまった。

遺跡から戻ってきたのは夕方だった。今日は3人で夕食を食べた。シンタ(仮名)さんと稲田(仮名)君はこれから南米に行くといっていたので、俺が持っている南米の情報を2人に伝える。俺とシンタさんの思い出話にも花が咲いてとても楽しい夜になった。

次の日の朝、俺は2人と別れてグアテマラのアンティグアに向った。コパンの村を出たら、すぐに国境がありグアテマラに入国である。首都のグアテマラシティ―を経由してアンティグアに向う。

アンティグアという町の噂は南米にいる時から聞いていたのだが、とても素敵な町なのだそうだ。その噂に誘われてアンティグアまで来てしまったのだが、噂通りの素敵な町である。教会や博物館があり、そこを見学する。なかなか素晴らしかった。町の雰囲気も落ち着いた感じで良い町である。しかし、雨が多くて残念だ。博物館の帰りに雨に降られて濡れてしまう事がよくあった。

アンティグアのインターネットカフェでメールをチェックするとヒロミ(仮名)君からアンティグアの近くのパナハッチェルと云う村にいると云うメールが来ていた。パナハッチェルもとても素晴らしい所らしいので、行ってみる事にした。

アンティグアからパナハッチェルまでの直行バスは無いらしいので、途中で何度もバスを乗り換えながらパナハッチェルを目指す。夕方、ようやくパナハッチェルにたどり着いた。ヒロミ君が泊っている宿を探したが、なかなか見つからない。しょうがないので近くのホテルに泊る事にした。

それからパナハッチェルの町を歩いていると、ヒロミ君に再会した。感動の再会である。それから、2人でパナハッチェルの町を観光した。パナハッチェルは湖に面した綺麗な町である。湖以外に観光するようなところは少ないのだが落ち着く町だ。近くの村でバザールが開催されると云うので2人でその村に行った。有名なバザールらしく、村中がお祭りのように盛り上がっていた。露店やたくさんのお店がひしめきあっていて、とても面白かった。

パナハッチェルを出発する日にヒロミ(仮名)君は「体調が優れないのでもう少しここに残る」という。少し休めば大丈夫だと言うのでヒロミ君とはここで別れることにした。パナハッチェルからはティカルと云うマヤの遺跡に行く。パナハッチェルを出発して何度かバスを乗り換えながら首都のグアテマラシティ―に到着した。グアテマラシティ―からティカル遺跡までは夜行バスで行く。バスチケットはすぐに買うことが出来た。バスの出発時間は夜だったので少し時間がある。せっかくなのでグアテマラシティ―の観光をすることにした。

いつものことだが、街中を歩いていると怪しい男が声をかけてきた。こういう奴等はたいてい、何処かの客引かインチキ商売をしている奴等である。今、声をかけてきた奴も、とても怪しい。自分はファッションショーを企画している人間で、今度の日曜日に俺のショーがあるから君に出て欲しいのだ。と言う。俺も長いこと旅をしているが、こんな怪しい奴は初めてである。俺は今夜のバスでティカルに行くので日曜日のショーには出れないのだ。と、説明してやると、残念そうに引き下がって仲間が運転しているBMWに乗って行ってしまった。

グアテマラでBMWの様な高級車に乗ることが出きる人など限られている。BMWの登場により彼が本当のファッションショーのスカウトマンだった可能性が大きくなった。俺は驚きと共に断ったことをちょっと残念に思った。もし、本当に権威のあるファッションショーだったら、日曜日までの滞在費も彼等が出してくれたかも知れないし、旨くいけば俺もモデルの仲間入りである。しかし、今となっては真偽の程は確かめることが出来ない。

朝、グアテマラシティ―からの夜行バスはサンタエレナの町に到着した。ティカル遺跡には宿泊できるホテルが無いらしいので、サンタエレナと云う町に宿泊する。サンタエレナを拠点にしてティカル遺跡を見学するのだ。

ティカル遺跡はジャングルの中にあり、石造りのピラミットが点在している遺跡である。このピラミットはヨーロッパ人が侵略してくる以前のアメリカ大陸で1番高い人工建築なのだそうだ。ジャングルの奥に続く遊歩道を歩いていくとピラミットにたどり着く事が出きる。その中には登ることができるピラミットも幾つかある。ピラミットの上からの景色はとても素晴らしかった。ピラミットの上で景色を見渡しながら俺は時間を忘れてしまった。

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