キトと温泉

朝、ナスカを出発してリマに向かう。バス会社でリマ行きのバスの出発時間を聞いた。するとリマに行くバスは夜遅くでないと来ないのだそうだ。そんな夜遅くまで何をすれば良いというのだ。困り果てていると、バス停の近くにイカと云う街に行く乗り合いタクシーの乗り場があると言うのだ。これに乗ってイカまで行けば、そこからリマ行きのバスが出てるらしいのだ。

オタバロから戻ってきた俺はヤスシ(仮名)君が教えてくれた、旧市街にあるホテルに泊まることにした。キトの観光スポットはたいてい旧市街にあるのでこちらのホテルの方が便利なのだ。ちなみに、我々が最初に泊ってた所は新市街の方である。日本大使館や銀行等は新市街の方にある。

旧市街にあるこのホテルには1週間ほど滞在してしまった。ホテルの近くにある素敵な教会を見学したり近くの市場を見に行ったりしてるうちにオタバロからヤスシ君が戻ってきた。ヤスシ君とは市内を一望できる丘に行ったり、博物館に行ったり、動物園に行ったりした。丘からは沢山の教会や我々が泊っているホテルを見る事が出来た。博物館には黄金の首飾りや腕輪などがたくさん展示されている。動物園ではガラパゴスゾウガメを見ることが出来たのだ。丘も博物館も動物園もとても満足する事が出来た。

このホテルには我々の他にも日本人が滞在していて、いろいろと情報を聞く事ができた。そして、コロンビアに行ったことのある人もいて、コロンビアの情報を聞く事ができた。ゲリラは確かにいるらしいが気をつけていれば大丈夫なようである。コロンビアはとても良い国だったそうである。それでも、やっぱりコロンビアに入国するには不安がつきまとう。

キトは物価が安いし、気候も良いのでここでスペイン語を勉強する人も沢山いるのだそうだ。このホテルにもスペイン語を勉強するためにキトに来た人がいて、明日から家庭教師の家にホームステイをする予定なのだそうだ。

ホテルに滞在している日本人達からは他にもいろいろな事を教えてもったのだが、1つだけ残念な情報があった。俺とヤスシ(仮名)君が行って来た赤道記念碑なのだが、本当の赤道からはチョットずれてしまっているのだという。本当の赤道は俺とヤスシ君が行くのをやめた、ちんけな博物館の方なのだそうだ。ショックである。そこで、俺とヤスシ君はもう一度赤道記念碑に行ってくることにした。今回は元気娘サチ子(仮名)ちゃんも一緒に3人で赤道記念碑に行く。俺とヤスシ君は一度来ているので道に迷う事も無く赤道記念碑に到着。彼女は赤道記念碑の前でブリッジをして記念撮影。

記念撮影のあと、本当の赤道がある博物館に行くことにした。この博物館では溜めてある水を抜くときに渦巻きが出来る実験をしてくれた。北半球で栓を抜くと右回りに渦が巻き、南半球では左回りに渦を巻く。赤道上で水を抜いても渦巻きは出来なかった。実際に目の前で実験されると驚くほかない3人。太陽の動きの実験も見せてくれた。原始的だけど面白い実験で3人とも感激した。

実験のあとは博物館の中を案内してくれた。ここはインディアンの博物館になっている。ここの部族は人間の干し首を作る風習があったらしくその作り方を説明してくれた。そして、この博物館には本物の人間の干し首があるらしく、それも見せてくれた。ビックリである。我々3人にガイドさんが1人付いてくれて親切に説明してくれた。しかし、ガイドさんの説明はスペイン語なのである。俺とサチ子(仮名)ちゃんがかろうじてスペイン語の単語が解る程度である。身振り手振りも含めて何とかガイドさんと意思の疎通をはかりながら説明を聞く。ちなみにヤスシ君はスペイン語は全然出来ないそうである。

博物館はガイドさんが親切に説明してくれたお蔭で、とても楽しく見ることが出来た。博物館の見学がほとんど終わったあたりで、ガイドさんが英語も喋れる事が判明。それだったら、最初から英語で説明してもらえば我々はもっと簡単に説明を理解できはずである。そんな訳で最後にガイドさんと我々3人で大笑いして帰ってきた。ヤスシ君は飛行機のチケットの関係でその日の夕方にあわただしく出発して行った。

旧市街のホテルでの滞在が3、4日経った頃から、5人ぐらいで夕食を一緒に食べるようになった。その中のメンバーの何人かで近くの温泉に泊りがけで行こうと言うことになった。主催者は阿部田(仮名)さんで、俺を含めると8人ぐらいのメンバーになるらしい。このホテルに宿泊している人以外にも温泉に行く人がいる様である。彼らは1ヶ月ほどホームステイをしながらスペイン語を勉強してるのだという。その中の1人はこれからコロンビアに行く予定だと阿部田さんが教えてくれた。もし、彼と一緒にコロンビアに行ければ1人で行くよりも心強い。

我々が行く温泉はキトからすこし離れたところにあるバニョスという村にあるのだ。バニョスとはスペイン語で「温泉」と云う意味である。バニョスに行く2日ほど前に顔合わせも兼ねてみんなで夕食を食べる事にした。残念なことにスペイン語を勉強ている2人は体調を崩したとのことでバニョスに行かないことにしたのだそうだ。もう1人、コロンビアに行く予定の人が我々のホテルに夕食を食べに来た。なんと、コロンビアに行く予定の彼とは森川(仮名)君であった。リオのカーニバルの時に会ってクスコで再会した森川君と、3度目の出会いである。お互いに驚いてしまった。

森川君もコロンビアに行くのが不安だったみたいで、誰かと一緒に行きたいと思っていたらしい。そんな訳で、俺と森川君は2人で一緒にコロンビアに行くことに決定した。そんなこんなでその日の夕食はとても賑やかだった。夕食の後に森川君のホストファミリーの人も交えてディスコに行くことになって楽しい夜になった。

いよいよバニョスに出発する。メンバーは阿部田(仮名)さん、森川(仮名)君、サチ子(仮名)ちゃん、リュウ(仮名)君、それにフミオ(仮名)君と俺の6人である。フミオ君と俺は出発する日の朝に写真屋さんで証明写真を受けとってこなくてはならないので、チョットあわただしい出発になった。

お昼過ぎにはバスに乗ってキトを出発して夕方前にはバニョスに到着した。ホテルを探す人と荷物を見張ってる人に分れてホテルを探す。グループで旅をするのは良いものである。そんな風にして簡単にホテルを決めることが出来た。

ホテルに腰を下ろしてすぐに温泉に行く。海外の温泉のほとんどはプール感覚で入る温泉である。みんな水着着用なのだ。それでも久々の温泉で気持ち良い。

夜遅くまで6人で話しこんでいたので次の日の朝はみんな起きるのが遅い。今日はみんなでトレッキングに出かけた。釣り橋を渡り、山道を登っていく。眺めの良い景色が広がる。途中で民家を発見したので、そこの民家の住人と交流を試みた。リュウ(仮名)君はスペイン語を話せるので、水を飲ませて欲しいとお願いした。するとおばちゃんが出てきて水をくれた。それをきっかけにして、おばちゃんと交流を深めることに成功。おばちゃんは小さな犬と一緒に1人だけででここに住んでいるのだそうだ。みんなでおばちゃんを囲んで写真を撮った。日本に帰ってから、現像した写真をおばちゃんに送ってあげることにしたのだ。それを伝えるとおばちゃんはとても喜んでくれて我々に住所を教えてくれた。カメラの持ち主のサチ子(仮名)ちゃんが帰国した後に、写真を現像しておばちゃんに送ったそうである。

この日の夕方は昨日と別の温泉に行くことにした。近くに滝があって眺めの良い温泉である。かなり素敵な温泉だった。みんなで温泉に入ってのんびりとした。

温泉の後はみんなで夕食を食べてからホテルに戻ってきた。今夜はトランプ大会が開催された。単純なゲームなだけにみんなで白熱して、かなり盛り上がった。気が付くと夜中の2時か3時である。

次の日もバニョスにもう一泊する事にした。温泉には日本人を引きつける何かがあるのだろう。今日は村を一望できる丘に登る。この丘からバニョスの村を一望する。崖の間にできた小さな村だけど、景色がとても綺麗である。

今日も夕方から温泉に行く。これで3日連続のバニョスの温泉である。このままでは我々はここに居ついててしまいそうなので、いよいよ明日出発することにした。明日の朝はチョット早目に起きる予定であるが、今夜もトランプに興じた6人は夜遅くまで騒いでいた。

朝、俺は9時半頃に起きることが出来た。他の人もだいたい起きてるみたいだ。お昼前にバニョスを出発すれば良いらしい。キト行きのバスは1時に出るそうだ。みんなそのバスに乗って出発した。途中で阿部田(仮名)さんとリュウ(仮名)君とフミオ(仮名)君とサチ子(仮名)ちゃんがバスを降りた。4人は他の町に向かうのでここでお別れである。

俺と森川(仮名)君はこれからコロンビアに向かう。俺と森川君はクスコとキトで偶然の再会をしているのだ。似たようなコースを辿っていたり、メールでやり取りをしながら旅をしているのであれば何度も再会する事はあるのだが、お互いにかなり違うコースを旅していて2回も偶然に再会をするというのはとても珍しい事だと思う。当然、2人で連絡は取り合ってない。クスコで別れるときには俺は南に、森川君は北に行くと言って別れたので、もう会わないと思っていたのにキトで再会してしまったのだ。恐ろしいほどの偶然というのはありえるのだ。

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