選挙と夜行バス

プカルパに到着して、最初にやる事はホテル探しである。港から街に出てホテルを探し始めると、ホテルはすぐに見つける事が出来た。次にバスターミナルを探す。バスターミナルも簡単に発見する事が出来た。バスの出発は明後日だったので早速予約を入れる。これでやっとハンモック生活から解放されたのだ。バスの予約を入れる事が出来て安心したら腹が減ったので美味しい食事を食べに行った。久々のまともな食事で美味しかった。

イキトスでもそうだったが、プカルパも大統領選挙のムード1色である。しかも投票は明日なのだそうだ。テレビでも選挙関連の報道をやっている。大統領選挙に出馬している人は16人ぐらいなのであるが、事実上は現役のフジモリ大統領とトレド氏の一騎打ちの様である。ホテルの親父に聞くと、フジモリが再選するだろうと言っていた。ちなみに食堂のおばさんはトレドが優勢だと言っている。どうやら選挙結果は終わってみないと判らない様である。

1夜明けて大統領選挙当日がやってきた。街の中には特に混乱はない。街の人の人差し指に青いインクが付いている。よく見てみるとほとんど全ての人の指にインクが付いているのだ。インクの事を聞いてみると、このインクが投票した証拠だというのだ。これで2重投票を防ぐのであろう。しかし、子供以外は全員が投票に行っているようだ。ホテルの親父に聞いてみると、全員が投票に行かなくてはいけないのだそうだ。もし投票に行かないと警察に捕まるらしいのだ。

俺は投票所に行ってみる事にした。投票所の警備は厳しくなっていて、警官がいたる所に立っていた。もちろん、警備している警官も指にはインクが付いている。俺は投票所の中を覗こうとしたのだけれど、警官に止められてしまった。さすがに大統領選挙の投票所である。安全と公正を守るために警備は厳しくなっている。

ホテルの近くにカフェがあったのでそこでゆっくりとお茶を飲む事にした。ふと、カフェのおばちゃんの指を見るとインクがなかったのだ。指にインクが無いと言う事は投票に行っていない証拠である。何で指にインクが無いのかをおばちゃんに聞いてみた。すると彼女はコロンビア人なので投票権が無いのだそうだ。おばちゃんは笑って答えてくれた。俺はこれぐらいのスペイン語を理解できるぐらいに成長していた。もちろんジェスチャー付ではあるのだが。

イキトスに着いた時には挨拶も出来なかったスペイン語であるが。南米を旅するにはスペイン語が出来ないと、とても不自由するようである。船の中で親子にも教えてもらえたし、プカルパのホテルの親父にもスペイン語を教えてもらった。数字も教えてもらったので少しづつ覚えるようにした。

大統領選挙は即日開票のようである。ホテルの親父もカフェのおばちゃんもテレビに首っ丈である。街中みんなが選挙に夢中のようだ。きっとペルー中が選挙の結果に注目しているのだろう。どのテレビ局も大統領選挙の開票速報の特別番組をやっている。夜遅くなっても、結果は良くわからないようであった。

次の日の朝、誰が勝ったのかをホテルの親父に聞いてみるが、ハッキリした答えを聞く事が出来なかった。フジモリが汚い事をしているようだが、俺の語学力では良くわからなかった。スペイン語を勉強し始めたと言っても、単語を少し覚えただけなのである。

それよりも、バスの出発時間が迫っていたのでバスターミナルに行く。このバスは首都のリマまで行くのである。バスは満杯のお客を乗せて午前中にはプカルパを出発した。アンデスの山々を越えていくらしい。景色がとても素晴らしいのだ。渓谷の道をどんどん登っていく。そのうちに夜になった。バスは途中で何回か休憩を取りながらも、ひたすら走る。夜通し走り続けて次の日の朝に首都のリマに到着した。船と違ってとても早い移動だった。

エジプトのサファリホテルやケニアのサファリパークで一緒だったフロカツ(仮名)さんの話によるとペルーのリマはとても治安が悪いのだそうだ。そんな訳でリマには滞在せずに、すぐにクスコに行くことにする。俺が降りたバスターミナルでクスコ行きのバスの事を聞いてみる。クスコ行きのバスは別のターミナルから出発するらしいのだ。早速、クスコ行きのバスターミナルの場所を教えてもらい、そちらに向かった。

30分ほど歩いてバスターミナルを発見。さっそくクスコ行きのバスの事を聞いてみる。すると、クスコに行く前にナントカ言う街でバスを乗り換えてクスコに行くのだそうだ。俺にとってはそんな事は問題ではないので、すぐにバスのチケットを買う。出発は今日の夕方なので、それまでリマの街を観光することにした。その前に銀行でお金を引き出さなくてはならない。

バスターミナルの人に銀行を教えてもらった。しかし、教えてくれた所に銀行が無いのである。やっと銀行を見つける事が出来たが、俺のカードが使えない銀行だったのだ。困ってしまった。仕方がないので、近くにあったシェラトンホテルで聞いてみることにした。すると、ホテルの中に自動現金引き出し機があった。俺のカードでもお金を引き出す事が出来た。さすがに世界に名だたる一流ホテル、シェラトンである。

広い公園を見つけてその中をお散歩。すると、公園の中に博物館があったので入ってみることにした。思ったよりも博物館は広くていろいろ展示していた。博物館を出てから遅い昼飯を食べて、バスターミナルに戻った。簡単ではあるがリマの1日観光は満足のうちに終わった。

バスは夕方にリマを出発した。2日連続の夜行バスである。昨日まではジャングルの中を移動していたのにアンデス山脈を超えると見渡す限り砂漠になったのだ。景色は岩山ばっかりでほとんど緑がないのだ。砂漠の中を走っているうちにすぐに夜になった。

早朝にはバスを乗りかえる街に到着した。大きなバスターミナルである。南米はバス路線網が整備されていてバスターミナルが整備されている街もたくさんあるのだ。感心する。バスを降りて運転手が教えてくれたカウンターに行って、俺が持っているクスコ行きのチケットを見せた。カウンターの人は俺のチケットを見て、クスコ行きのバスの出発時間を教えてくれた。

クスコ行きのバスの出発時間は夕方なのだそうだ。今日の夕方まで時間が空いてしまった。バスターミナルに1日中いてもしょうがないので、この街の観光をしてくる事にした。荷物をバスのカウンターに預けて街の中心部に行く方法を聞く。バスターミナルの前から路線バスが出てると言うのでそれに乗って街の中心部に行くことにした。

この街はアレキパと言う町である。石畳の道路が延びていて、素敵な感じの街である。博物館やお土産屋があって、チョロチョロと見て周る。昼飯も食べる事が出来た。ツアー会社がたくさんあってアンデスに行くツアーもあるようだ。

少し時間に余裕を持ってバスターミナルに戻る事にした。バスは時間通りに出発した。岩山の中を走って行く。今日で3日連続の夜行バスであるが、船の旅から比べるとスピードがとても早くて快適である。それに、昼間は色々な所を見学できるという事がとても喜ばしい。

クスコに到着したのも朝であった。この街は標高3400メートルぐらいの高いところに位置しているのだ。そのため、高山病にかかる事もあるらしい。だが、俺には高山病と云うものは無縁のようである。頭も痛くないし特に身体も辛くはないのだ。クスコのバスターミナルは街の中心部からは離れているので、市内の路線バスに乗って街の中心に行く。ホテルを探す為に重いバックパックを背負って歩きまわっても、高山病はほとんど平気である。普段よりちょっと疲れるぐらいだ。

ホテルを決めてから街の探検にくりだした。お店屋さんや旅行会社を見てまわる。そこでなんと、森川(仮名)君に再会したのだ。リオのカーニバルの時に堀間(仮名)さんと一緒にいた森川君である。森川君は堀間さんと別れて、別の男の子と二人で旅をしていた。彼らは明日の朝にクスコを出発するというので今晩は一緒に食事を食べる事にした。驚きの再会である。

一通りクスコの街を見てまわってホテルに戻ってゆっくりしたら、森川君達との待ち合わせ時間になった。森川君達はマチュピチュにも行って来たし、クスコの観光もだいたい終わってしまったらしいのだ。俺は彼らから電車の値段や利用したホテルなど色々な情報を教えてもらった。夕食の後に彼らの部屋に行ってさらに飲む事にした。

彼らは明日朝早く出発した後、メキシコを目指して北上して行くのだそうだ。宴が終わった時にはもう夜遅くなっていたので、ホテルに帰るのがちょっと怖かったが何事もなく俺のホテルまで帰ることが出来た。

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