ゴーゴーザンビア

ザンジバル島から戻ってきた船がダルエスサラームに到着したのは朝の6時だった。今日はいろいろとやらなくてはならない事があったのでザンビアの首都のルサカに向けて出発するのは明日にした。ザンビアまでの移動手段は鉄道である。俺は以前、中国で大変過酷な鉄道の旅を体験していたのでちょっぴり不安である。しかし、アミン(仮名)ちゃんが一押しする鉄道の旅なのだ。中国の様に過酷な旅にならない事を期待しよう。

ザンビアまで行くお金が足りなくなっていたので銀行で両替したり、ザンビア大使館でザンビアビザを発行してもらったりしているうちにダルエスサラームでの1日が過ぎていく。ザンビアビザは午前中に申請するとその日の午後には発行してくれたので大助かりだ。

次の日、ホテルをチェックアウトして鉄道駅まで行く。駅舎はとても立派だった。ザンビアまでの列車のチケットを買おうと思ったら今日の列車はもう発車してしまったのだそうだ。我々の情報が間違っていた。夕方出発と云う情報だったのに列車はもうすでに発車していたのだ。しょうがないので明日のチケットを買うことにした。ダルエスサラーム出発は1日延びてしまった。だが、明日の出発は夕方なのだそうだ。

がっかりしながらホテルに戻ってくると浩史(仮名)君がホテルに来ていた。それともう一人、ジンバブエから北上している男の子が同じホテルに泊っていたので、4人で一緒に夕食を食べて情報交換をした。浩史君も明日の列車で我々と一緒に出発することになった。

次の日、3人とも無事に列車に乗る事が出来た。この鉄道は「タンザン鉄道」と言って、アフリカでは有名な鉄道なのだそうだ。途中でサファリパークの中を走って行くので、運が良ければ野生動物をたくさん見る事が出来るのだ。我々は列車の中からインパラやキリンを見る事が出来た。夕日も綺麗に見ることが出来たし、感激である。

タンザン鉄道の旅は中国鉄道の旅から比べるととても快適で楽しみながら過ごす事が出来た。浩史(仮名)君はマラウイ行くのでザンビアに入国する前に列車を降りていった。浩史君とはここでお別れである。

ダルエスサラームを夕方に出発して三日目の朝にザンビアのカピリムポシという町に到着した。ここがタンザン鉄道の終点である。タンザン鉄道の終点からはピックアップバスに乗って首都のルサカに向かう。ルサカの町並は何となくアメリカの地方都市のような感じだ。道路の作り方とかビルの建て方がアメリカに似ているのだ。きっとアメリカの真似をして作った町なのだろう。

ザンビアにやってきた目的はタンザン鉄道とビクトリアの滝である。首都のルサカには一泊だけして、すぐにビクトリアの滝を目指す。ビクトリアの滝はザンビアとジンバブエの国境にある大きな滝である。北米のナイアガラの滝と南米のイグアスの滝に並ぶ世界三大瀑布の1つである。世界三大瀑布の中ではビクトリアの滝を見に来る事が1番難しいだろうと思っていたのに最初に訪れる事になってしまった。

リビングストーンと云う小さな町に着いた。ルサカからバスに乗って7時間ぐらいの距離である。この町のすぐそばにビクトリアの滝があるのだ。町の中心からは滝の音は聞こえない。ビクトリアの滝は町の中心からバスで15分ぐらいの所にあるそうだ。今日はもう夕方だったのでビクトリアの滝は明日までお預けになった。

朝、ホテルをチェックアウトしてバスに乗りビクトリアの滝に向かう。滝の近くのお土産やさんに荷物を預けて、いよいよビクトリアの滝とのご対面である。森の中に散策路が整備されていて、そこを歩く。ここまで来ると滝の「ゴー」と云う音が間近に聞こえる。水しぶきが雨のように降っている場所もある。木の隙間から水が流れ落ちてるのが見える。胸を躍らせながらやっと展望台に出た。

感激だった。とてもデカイ滝だ。約100メートルの深さの大きな亀裂の中に一気に水が落ちていくのである。展望台に出ると滝壷まで見下ろす事が出来た。しかも横幅が半端でなく長いのだ。水しぶきで視界がさえぎられてしまい一番奥まで見る事が出来ない。その場に立ち尽くして滝に見とれてしまった。まさに圧巻である。

散策路が延びていて更に奥の展望台まで行く事が出来た。散策路の一番奥の展望台は崖の上にあってその崖の向こうは、もうジンバブエなのだ。今、我々がいるところはザンビア側の滝ということになる。

滝を眺めているうちに時間は過ぎてしまってあっという間に6時間ぐらい経ってしまっていた。ザンビア側の滝を思いっきり満喫した後に、国境を越えてジンバブエ側に行く事にした。ザンビアとジンバブエの国境は高さ100メートルほどの崖になっているのだ。その崖に橋が一本架かっていて、車も鉄道もその橋を渡って国境を越えるのである。橋の下にはビクトリアの滝を落ちてきた水が1つの激流になって流れている。

俺とアミン(仮名)ちゃんは国境の橋を歩いて渡ることにした。すると国境の橋の真ん中になにやら人が集まっている。何をしてるのかと思ったらバンジージャンプをやっていたのだ。驚きである。

橋の上からロープ一本でピョーンと飛んでいく。生で見るのは初めてだ。バンジージャンプをしている人の中に一人の日本人の男の子がいた。彼は我々2人と話をしながらもどんどん器具を装着されていく。バンジージャンプする準備が完了して「5、4、3、2、1、バンジー!!」で、まっ逆さまに落ちていった。バンジージャンプの値段は2回でUS90ドル。俺もやってみたくなった。

スタッフに聞くとすぐに飛べると言うので、バンジージャンプに挑戦することにした。受付を済ませてバンジージャンプ用の器具を装着してもらう。注意事項を説明してもらってバンジージャンプの台に立つ。俺は高いところは平気なんだけれども怖い。腰が引けてしまってるのだ。自分でもビックリなのだけど実際にジャンプ台に立ってみると予想以上に怖かったのだ。眼下にはビクトリアの滝から落ちてきた川の水が1つの激流になって流れている。

ジャンプ台に立つと、はっきり言わなくても、「おっかねぇ。」。カウントダウンが始まる前に深呼吸をする。ここから飛び降りるなんて、「おっかねぇ。」。俺の気持はただ1つ、「おっかねぇ。」。足がガクガクするのが判った。日本人の男の子のアドバイスはバンジーの合図と一緒にためらわずに飛んでしまう事だそうだ。スタッフのカウントダウンが始まる。「5,4,3,2,1、バンジー」で、思いきって飛び出した。まっ逆さまに激流めがけて落ちていく事、約2秒。落下している間は激流がどんどん近づいてくるのが見えるだけ。他を見る余裕は無し。すぐにゴムに引っ張られてビローンって上に戻される。おもちゃみたいに身体が空中に投げ出され、また落ちていく。2回目に落ちる時の自由落下の時間は1秒ほどに短縮されていた。最初の落下の時よりも余裕がある。後は空中でブランブランと揺られながら救助を待つ。救助を待っている間は逆さ吊りの状態になっているので頭に血が登ってきて痛い。血管が切れそうなぐらい痛かった。この頭痛が1番辛かった。すぐに上からロープに吊られて救助マンが降りてきて、俺を救助してくれた。

今日のバンジージャンプは俺が最後だった様で2回目はまた明日おいで。と、言われて「明日も飛べる証明書」をくれた。バンジージャンプで怖いのはジャンプ台に立ってから飛び降りるまでだった。飛び出してしまえば恐怖心はほとんど無かった。2秒ほど重力に体を預けてしまうだけである。重力に身体を預けてしまうまでの恐怖感が怖いのである。ちょっと気分が高揚したまま、橋を渡ってジンバブエに入国した。

ジンバブエ側の町の名前はビクトリアフォールズ。滝の名前がそのまま町の名前になってるのだ。ビクトリアの滝のために作られた観光用の町である。ザンビア側のリビングストーンが現地人の為の町であり、2つの町は色々と対照的だった。

今日はジンバブエ側から滝を見に行く。ザンビア側は無料だったのにジンバブエ側は滝を見るために入場料を取っていた。こう云うところからして観光用の町である。ジンバブエ側も散策路が整備されていて展望台が何ヶ所もあって見ごたえがあった。舞い上がる水しぶきが凄くて霧のようになっていて滝壷までは見えなかった。今日は水しぶきが多くてドシャ降りの雨のようになっていたので服はベチヤベチヤになってしまったのだ。

展望台の1番奥までくると、ザンビア側が見ることが出来た。昨日我々がいたところも見えた。全体を見渡してみると、ビクトリアの滝の大きさが実感できた。まさに圧巻である。

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