素敵なシーワオアシス

シーワオアシスと云う所に行く事にした。リビア国境の近くにある小さなオアシスである。1週間ぐらいの予定でサファリホテルからミニツアーを企画して出発する。シーワオアシスミニツアーのメンバーはサユリ(仮名)ちゃん、久仁子(仮名)ちゃん、将介(仮名)君、それにイエメンで一緒だったよし子(仮名)さんと俺の5人。

朝早くカイロを出発してアレキサンドリアに向う。2時間ほどバスに揺られて、お昼前にアレキサンドリアに到着。そのままシーワオアシス行のバスに乗り換える。シーワオアシスまではほとんど砂漠である。5人とも窓から外を眺めたりお話したり眠ってしまったりしながらシーワオアシスに到着するのを待つ。バス自体は日本にも負けないぐらいの設備が整ってる最新式のバスで座席も悪くはないのだが、シーワオアシスに到着したのは夜の8時ごろだった。アレキサンドリアからシーワオアシスまでは6時間以上の長旅になってしまっていたので、到着した時には5人共ヘトヘトに疲れていた。サファリホテルで下調べしてきた宿はすぐに見つかったのでチェックイン。そそくさと夕食を食べて、5人とも眠りについた。明日からシーワ観光がスタートする。

朝早くから太陽がさんさんと輝いている。今日はロバ車を借り切ってシーワオアシスの観光名所を巡る事にした。ここには古代エジプト文明の遺跡はほとんど無いのだけど、マケドニアのアレキサンダー大王が攻めてきた時に造られた遺跡や神殿があるのだ。丘みたいになってる神殿の廃墟や崩れかけたレリーフの遺跡などを巡る。一つ一つの遺跡が結構離れた所にあるので、全部歩いて回るのは大変である。ロバ車に乗って、遺跡と遺跡の間を移動するのもホノボノしていて5人とも大満足である。

シーワオアシスには温泉が湧いている所が何ヶ所かあって、その1つにクレオパトラ温泉というのがある。一応、温泉と言う事になってはいるが冷泉である。温泉というよりはむしろプールに近い感覚だった。5人とも水着を持ってきているので着替えて遊び始める。水温はちょっと冷たかったけど一時間ほと泳いだり飛びこんだりして温泉で遊んだ。午後はいったんホテルのある村まで戻ってきて休憩。いくらオアシスと言っても、ここは砂漠のど真ん中である。午前中の観光だけでみんな結構疲れていた。

午後の日差しが辛かったので近くのお店で冷たい物を飲みながら涼んだ。太陽が傾いて涼しくなってから夕日を見に出発した。午前中に観光案内をしてくれたロバ車に乗ってシーワオアシスの近くにある小さな湖まで行く。湖の湖畔は夕日のスポットになっているみたいで、30人ぐらいの観光客が来ていた。世界各国から来ているみたいで様々な人種の人がいた。俺達が行った日は俺達以外に日本人はいなかった。

せっかくの夕日だったけど、薄い雲の中に太陽が入ってしまって、ちょっと残念。だけど、太陽が地平線に沈む直前に雲の中から再び現われて、夕日が沈む所は綺麗に見る事が出来た。所々に雲があるので夕焼けもとても綺麗に見る事が出来たのだ。

夜、5人で近くのレストランに夕食を食べに行く。だけど、なかなか料理が出てこないので、5人でしりとりを始める事にした。只のしりとりじゃ面白くないので「地名しりとり」を試してみる。5人ともいろんな所に行っているので、結構地名が出てくるのだ。これが思わず白熱してしまって料理が出てきても終わらず、夕食を食べ終わるまで続いた。夕食の後、5人で近くの民芸品屋さんまでお散歩。

この日は「地名しりとり」も含めて5人でたくさん話をした。将介(仮名)くんは大学四年生で来年の就職も決まっている。社会人になる前に一人で世界を旅してみたくて、今回の旅に出たのだそうだ。久仁子(仮名)ちゃんは会社を辞めて一人旅に出たのだそうだ。なかなかワイルドな人で、今回のシーワオアシスミニツアーの主催者も彼女である。サユリ(仮名)ちゃんは「世界一周航空券」なるものを使って旅をしているのだそうだ。目の前にいる女の子が世界一周をしている最中なのである。4人ともびっくりした。サユリちゃんの今後の予定はヨーロッパを周って、北米、南米を歩き回り、太平洋を越えて日本に戻るのだそうだ。よし子(仮名)さんは俺とイエメンで一緒に旅をしたことがあるが、彼女にも驚かされた。彼女はなんと人妻なのだ。今は旦那さんから了解をもらって、2、3ヶ月の一人旅を楽しんでいるのだそうだ。俺も、最初にその事実を知った時にはびっくりした。疑いもせずによし子さんも独身だと思いこんでいた。ちなみに、他の4人はシーワオアシスミニツアーの時点では独身である。

次の日、俺とよし子(仮名)さんとサユリ(仮名)ちゃんは死者の山という所に行く。ホテルから歩いて行ける所だったので歩いていった。だけど、砂漠の直射日光にさらされてしまったので、お昼前にはヘトヘトになってホテルに戻ってきた。

将介(仮名)君と久仁子(仮名)ちゃんは観光会社にジープのチャーターをお願いしに行っている。二人はここからジープで砂漠を横断するのだ。明日シーワオアシスを出発して、数日間ジープで砂漠を駆け抜けてルクソールまで行くのだそうだ。ルクソールは王家の谷等の遺跡があるエジプトの有名な観光地だ。そんな訳で明日で二人とはお別れである。

将介(仮名)君と久仁子(仮名)ちゃんがジープで砂漠横断に出発するのを見送った後、残された3人は近くの砂漠で一泊キャンプをするツアーに参加する事にした。午後からジープで砂漠に出発。30分ぐらい砂漠を走ってテントがある所に到着した。そこには温泉が沸いていたので3人共温泉に入った。日本の温泉よりも少しぬるいけどクレオパトラ温泉よりは温かかったので、こっちの温泉は温泉という感じがした。今日はここで泊まることになる。

温泉で遊んだあとに、夕日を見るためにジープに乗ってテントを出発。ジープで砂漠を走るのはとても気持ちが良い。見渡す限りどこまでも続いている道も無い砂漠の中を風を受けながら走っていく。砂丘の下でジープが止まってみんな降ろされた。夕日を見るためには目の前にある砂丘を自力で登らなくてはならないのだ。砂丘はかなり急になっていて、途中からは這いつくばって登っていった。砂丘の頂上に辿り着くと綺麗な夕日を見る事が出来た。砂漠の夕日は綺麗である。夕日が沈むのを見た後、砂丘を降るのであるが砂丘があまりにも急斜面だったので、ゴロゴロ転がり落ちながら降っていった。グルグルと目が回ったけど面白かった。

夜、砂漠の夕食をたべた後、もう1度温泉に入る。星が出てきた。街から離れていて光りが殆ど無いので、地平線まで綺麗に星が見えた。流れ星もたくさん見れた。3人で温泉につかりながら星を眺めていい気分だった。しかし、1つ問題が発生した。砂漠の夜は寒いのである。温泉に浸かってると暖かいのだが、温泉から上がると、とても寒いのだ。よし子(仮名)さんとサユリ(仮名)ちゃんは気合で温泉から上がったのだけど、俺は温泉から上がると風邪を引いてしまいそうだったから一晩中温泉に浸かってる事にした。

一晩中温泉に入って起きているつもりだったけど、うつらうつらと寝てしまっていたみたいだ。お湯の温度が丁度良いぬるさだったので、寒くなる事ものぼせる事も無かった。星が時間と共に動いているのがちゃんと判った。なんだか感激だった。そのうちに東の空が明るくなって朝を迎えた。素敵な砂漠の一晩だった。一晩中温泉に浸かっていた俺の爪は茶色く変色していたが、風邪は引かなかった。朝の砂漠をジープで走りシーワオアシスに帰ってきた。

シーワオアシスに到着した初日にホテルのマネージャーが我々5人にある事を言った。ここ、シーワオアシスはカイロのような都会よりも時間がゆっくり流れているから、何事も急がずにゆっくりと行動するのが、正しいシーワオアシスでの過ごし方なのだそうだ。

遺跡の観光に行ったり、砂漠で1泊キャンプをしたりしてシーワオアシスで数日過ごすうちに、マネージャーの言っている意味が理解できる様な気がしたのだ。明日シーワオアシスを出発するのだが、3人ともこのシーワオアシスの時間の流れにのって最終日をのんびりと過ごした。小さな博物館があったので見に行ったのだが、そこにもゆっくりした時間が流れていた。

バスに揺られて6時間かけてアレキサンドリアに戻ってきた。来るときは素通りしたアレキサンドリアだったけど、帰りは一泊していく事にした。アレキサンドリアはマケドニアのアレキサンダー大王が紀元前4世紀に造り上げた街である。この街にはアレキサンダー大王やクレオパトラの時代の博物館があって、その博物館を見物するために我々はアレキサンドリアに寄ったのである。

アレキサンドリアに着いて最初にする事はホテル探しである。サファリホテルで手に入れた情報を頼りにホテルを見つけてチェックイン。それから3人で街に繰り出す。アレキサンドリアはカイロと並ぶ大都会である。だいたいの物はなんでも揃ってる。サユリ(仮名)ちゃんは美味しいアイスクリーム屋さんの情報を持っていたので、3人揃ってそのお店に行ってみる。お店はとても繁盛していてたくさんのエジプト人客がアイスクリームを買い求めに来ていた。我々3人も地元エジプト人に負けずにアイスクリームを手に入れて満足したのだが、そこで驚くべき人物に出会ったのだ。

その驚くべき人物とはとても大きなエジプト人女性である。彼女はアイスクリームを買い求めに来ただけなんだけど、目が覚めるぐらいデカイのだ。177センチある俺の背丈でさえ彼女の肩より低いのである。サユリちゃんやよし子(仮名)さんは彼女の腰ぐらいしかないのだ。とんでもない背の高さに驚かされるのだけど、それだけではないのだ。彼女の背丈に釣り合って余るぐらいにボリュームのあるの横幅も備えているのだ。俺史上最大の女性である。

3人とも彼女の大きさに驚きつつも褒め称え、彼女と戯れ握手をしてもらった。我々3人は驚きと嬉しさの中でアイスクリームを舐めながら、彼女とお別れしてホテルに戻った。夕食はお魚料理。アレキサンドリアは港町なのだ。

次の日、午前中のうちに博物館に行く。クレオパトラの石像などが有った。たくさんの展示物が展示してあって見ごたえ抜群の博物館だった。3人とも博物館が好きだったみたいで、それぞれに満足する事が出来た。昼飯を軽く済ませて、バスに乗ってカイロに戻る。サファリホテルに到着したのは、夜になってからだった。

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