医療者だけに出来る事

医療者は人の命を預かる唯一の特別な仕事だとは思っていない。どの仕事だって程度の差があるかもしれないが人の命に関連している。例えばバスや鉄道や飛行機などの運転士は大勢の人の命を背負って仕事をしている。一瞬の気の緩みで事故を起こしてしまえば数百人規模の死傷者を出す恐れがあるのだから、背負っている命の数を見るだけでも医療者よりも重大な責任を背負って仕事をしているといえるだろう。飲食業界で働いている人だって食中毒やその他の命に関わる危険性を持っており、そういう意味で人の命を預かって仕事をしている。建築業界で働いている人も建物の強度や耐久性のミスによって人の命を奪う結果をもたらす可能性をはらんでいる。どんな仕事についている人だって、程度の差はあるが人の命を預かりながら仕事をしているのだ。そんな中で医療者だけが特別だとはどうしても思う事ができない。

2005年の春から医療業界の勉強を始めて医療者の端くれになったが、現在の医療業界には「私達の医療業界は人の命を預かる特別な仕事なので他の仕事とは責任の重さが違う特別な仕事なのだ。」と言う感覚が当たり前のようにある。俺は一年間勉強してきて、どうしても医療業界だけが人命を扱う特別な仕事だと思う事ができない。他の業種の仕事と同じように責任があるのは判るが、医療業界だけが特別だと思う事はできない。

医療業界が特別だというのであれば運輸業界は「人々の生活に欠かせない公共機関」なので特別だろうし、飲食業界だって特別だろうし、製造業界、教育業界、どの仕事にだって特別な技術が必要だしその業界にしか出来ない特殊性がある。

エジプトを観光していた時に一緒だった女の子に医療者だけにしか出来ない特殊性を1つ教えられた。人命を扱っている仕事はたくさんあるが人の身体を治す事ができるのは医療者だけだというのだ。確かに人の身体を治す事ができるのは医療者だけかもしれない。この事を聞いてから、他にも身体を治したりそれに準じる仕事があるのではないかと考えてみたが今のところ思いつかない。

人命を扱う仕事はたくさんあるが、人の身体を治すのは医療者だけのようだ。話の焦点が人の命から人の身体に移ってしまってるが、俺に新しい考えを与えてくれた。人の命や身体を傷つける可能性は医療業界を含めてたくさんの業種の仕事に共通するが、人の身体を治せるのは医療業界だけの特殊性かもしれない。

2006年4月11日 記入

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