油性マジック

俺はバックパッカーの旅に出るときには油性マジックをもって旅に出ることにしている。油性マジックを持っていると何かと重宝するのだ。自炊できる宿に泊まってる時などは自分の食材や飲み物を冷蔵庫に入れておくときに、マジックで名前を書いておくと間違えて使われてしまう心配が少なくなる。ペットボトル等は間違えやすいので油性マジックが必需品と思える事もある。その他の使い道としては、遺跡や看板に自分のサインや日付を書く時に使う。

最初に油性マジックの便利さに気がついたのはアラスカを旅していたとき。アラスカの旅の最後に北極圏にレンタカーで行った。北極圏は北緯66度33分なのだが、そこに大きな看板が立っていた。その看板から先が北極圏になる。看板にはたくさんの落書きがされていた。いろんな国の人の落書きが書いてあって面白い。その落書きの中には日本人が書いた落書きもあった。落書きにの日付を見ると確認できるものは夏のものばかりである。北極圏なのだから夏に来るのが当然だろう。そんな落書きの端っこに俺も落書きを書いてきた。日付は3月だ。北極圏の3月はまだ冬なので珍しい落書きになったと思っている。

それ以来、落書きされている遺跡や看板があると、俺も自分の落書きを残してくるようになった。落書きはいろんなところにある。バックパッカー宿の壁が落書きだらけになってる事もあれば、遺跡の中の壁に書かれていることもある。世界中にある落書きの中で印象深い落書きがあった。どこの落書きだったかは忘れてしまったが、その落書きの驚くべきところは日付が1800年代だった事だ。100年以上前の落書きが残っているのだ。どこの国の人が書き残した落書きなのかは忘れてしまったが、俺が来る100年以上前からその落書きが存在しているのだ。10年ぐらい前の落書きはたまに見ることはあるが、100年以上前の落書きを見たときには感動すら感じた。既に、その落書き自体が遺跡の一部になっているのだ。1000年以上前に作った自分達の生活の場が朽ち果て、900年以上後に訪れた人が落書きを書き、更に100年後に訪れた俺が遺跡と落書きの時間の流れに感激する。

それ以来、俺は出来るだけ落書きを残していくようにしている。落書きには出身国と落書きを書いた日付を書くようにしている。油性マジック1つで遺跡の仲間入りをする事が出来るのだ。古代遺跡が持っている数千年の時間の流れの前では制定されて数十年の世界遺産制度などちっぽけな制度でしかない。なので、世界遺産であろうとそうでなかろうと関係なく落書きを残してきた。俺の書いた油性マジックの落書きも100年後には立派な遺跡の一部になるからだ。もちろん、落書きを書く遺跡は厳選している。警備員に見つかって消されてしまわない場所や、自然の風雨で消えてしまわない場所を選び出して書くようにしている。そういう場所にはたいてい先人達が落書きをしているのだが。

2006年3月10日 記入

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