屋久島ツアー

2009年12月7日~9日に行ってきた屋久島ツアーの記憶。

10年ぶりに屋久島に行ってきた。長期の休みは貰えないので2泊3日の弾丸ツアーだ。今回の屋久島ツアーのメンバーは病院の同期の友達3人だ。夏ぐらいからどこかに遊びに行きたいと話していたのだが、あれやこれやと話をしているうちに縄文杉に会いたいという事になり屋久島行きが決定した。秋ごろから準備を開始し、旅行会社で航空券やホテルやレンタカーも手配してもらって弾丸ツアーの準備は着々と進んでいった。屋久島弾丸ツアーのしおりまで作成し、前日には居酒屋で団結式を執り行い、万全の準備を整えた。出発の飛行機は6時50分なので、少し時間に余裕を持って5時40分に待ち合わせをして前日の団結式は終了した。当日の寝坊だけは気をつけたい。

出発当日は4時に起きるつもりだったが、実際に起きたのは5時40分の待ち合わせ時間だった。

団長からの電話で起こされて、ものすごく慌てる。みんなには先に行ってもらう事にして、慌てて着替えをして家を出る。荷造りを前日に済ませておいて助かった。タクシーを捕まえて、すぐに飛行場に向かった。俺が空港に付いた時にはすでに搭乗手続きが始まっていた。慌てて手荷物検査を終らせて搭乗ゲートに向う。時間はギリギリだったが、何とか遅れずに飛行機に乗り込むことが出来た。まさかの寝坊で朝からは慌ててしまった。

飛行機は何事も無かったかのように離陸した。朝日を浴びながらぐんぐん上昇していく。東の空で輝いている太陽が眩しい。朝から思いがけないハプニングを起こしてしまったが、これから始まる屋久島のツアーは面白くなりそうだ。

鹿児島空港はとてものどかな場所にあり、空港の周囲は畑ばかりだった。

大自然いっぱいで旅の雰囲気に圧倒されて、空港に着いただけでテンションが上がる。まずはバスに乗って鹿児島市内に向わなければならない。バス停に行くと市内行きのバスはすぐにやってきた。バスの車窓からは鹿児島空港に降りてくる飛行機が見えて、それだけでもわくわくしてしまう。日本の旅も面白い。バスは高速道路に乗って鹿児島市内を目指して進む。

鹿児島市内は10年ぶりだ。最初に来た時はママチャリの旅に出発する時だった。

覚えている風景は無かったが、車窓から見る鹿児島市内はなんとなく懐かしい気がする。空港からのバスは鹿児島市内の中心部に到着した。バス停から港までは歩いて移動する。港に向う途中で路面電車を発見した。街中を走る路面電車はどことなくステキな風景に感じる。

鹿児島市内にはアーケード街などもあり、繁華街は思っていたよりも賑わっているみたいだ。その繁華街を大きな荷物を持った旅行者が歩くのだから、結構目立ってしまった。

天気は晴れていて気持ちが良い。港の場所が判らないので人に道を聞きながら歩く。

港が近づいてくると桜島が大きく見えてきた。噴煙を上げた桜島に感激してしまう。高速船の出発までは時間があったので、港の近くで桜島を見ながらお弁当を食べた。

高速船はたくさんの人を乗せて桟橋を出発した。シートベルトを付けて座席からは立つ事が出来ないようになっているので、船の外に出る事は出来ないようだ。ちょっと残念だが仕方がない。しばらくは高速船からの景色を眺めていたが、そのうちに眠くなってしまったので寝てしまった。11時半に鹿児島を出発した高速船が屋久島に到着したのは2時ごろだった。

屋久島の港にはレンタカー会社の人が迎えに来てくれていた。

簡単にレンタカーの説明を受けたあと出発する。最初は白谷雲水峡に行ってみることにした。カーナビをセットしようとしたが、使い方が良く判らない。最新の電化製品はどうにも苦手だ。試行錯誤したがカーナビを使いこなす事が出来ず、マニュアルの地図と看板を頼りに白谷雲水峡に向った。白谷雲水峡への道は途中から山道になってきた。途中で車を停めて景色を見下ろす。こんな景色を見る事が出来て、来て早々屋久島の素晴らしさに引き込まれてしまった。

白谷雲水峡では簡単なトレッキングの予定だ。

遊歩道は整備されているので、トレッキングシューズでなくても簡単に屋久島の自然を満喫する事が出来た。まだ、都会の姿の我々にはちょうど良い場所だ。トレッキングとは言えないぐらいの散歩なのだが、屋久杉を堪能出来た。白谷雲水峡からの帰り道も途中で車を停めて写真を撮ったりしながら行く。レンタカーはどこでも好きな時に好きな場所でとまれるところが良い。

日没前にはホテルに到着したい。

レンタカーでホテルに向う。俺が写真を撮っている間に団長がカーナビの使い方をマスターしていた。素晴らしい。ホテルに行く前にスーパーで明日の縄文杉登山のためのおやつや水などを買いたいと思っていたら、カーナビを頼りにスーパーを見つける事ができた。明日の買出しを済ませて準備万端だ。

ホテルには日没前に到着する事が出来た。思っていたよりもステキなホテルだ。食事も美味しくて3人で感激してしまった。

ホテルで夕食を食べた後は星を見に出かける。

出来るだけ明かりが少ないところを探す。カーナビで適当に山の上の方に行く道を検索して登って行く。ちょっと開けたところを見つけた。暗いので周りが良く見えないが畑の真ん中みたいだ。雲も月もない夜で星空を眺めるには最適な条件だ。ちょっと寒いのだけれども空気が冷たいおかげで星が綺麗に見える。サルかシカの鳴き声が聞えるのだけれども気にならない。しばらく星を眺めていると時間を忘れてしまう。流れ星も見る事が出来て十分に満喫できたのでホテルに戻った。

ホテルに戻って温泉に入ったら急に眠気が襲ってきた。今日は早起きだったので眠くなった。明日も早くに起きて縄文杉まで登山の予定だ。

2日目も早起きで5時にはホテルを出発した。2日連続で太陽が登る前に起きるのはさすがに疲れる。それでも、縄文杉が待っているのだから寝坊は出来ない。ホテルでは朝食とお弁当を用意してもらう事が出来た。暗いうちに車を運転して縄文杉を目指す。路面状況が思っていたよりも悪くてスピードが出ない。後ろから来た観光会社っぽい車に抜かれてしまったが、向こうの運転手にとってはいつもお客さんを運んでいる慣れた道だ。無理をして現地の運転手に付いていって、事故を起こしても仕方がない。自分のペースでゆっくりと安全運転で縄文杉を目指す。

縄文杉の登山道には迷う事無く到着できた。我々以外にもたくさんの人達が登山の準備を始めている。かなり時間に余裕を持って出発したつもりだったが、我々は遅い方だという事がなんとなく判ってきた。

登山の準備はばっちり出来ている。ストレッチをして3人で円陣を組んで気合を入れてから出発した。外はまだ暗いが、あせらずゆっくりとトロッコ道を歩いていく。しばらく歩いているうちに外はだんだんと明るくなってきた。そのうちに頭に付けているライトも必要なくなってきた。朝日は雲の中で見ることが出来なさそうだ。

トロッコ道はまだ続いている。

明るくなってからも、ひたすらトロッコ道を歩いていると小杉谷橋が現れた。小杉谷橋を渡ると小杉谷休憩所があった。昔は集落で小学校もあったらしいが、今ではすっかり廃墟になっているようだ。休憩所では我々よりも先に登っていた人たちが休憩をしていた。せっかくなのでここで休憩して、ホテルで用意してもらった朝ごはんを食べてしまう事にした。

早朝だし標高も高いので歩いていないと寒い。ちょっと震えながら朝食のお弁当を食べる。我々が朝食を食べ終えた頃には他の登山者はほとんど居なくなっていた。置いていかれた感じがするが、我々は自分のペースで登って行く。トロッコ道は歩いても歩いても、永遠と思えるぐらいにどこまでも続いている。

トロッコ道を歩いていると、ほとんど寒さは感じない。

どこまでもどこまでもトロッコ道を歩いていく。トロッコ道の途中には屋久杉の森が広がっているのだが、それほど奥まで見渡すことが出来ないのが残念だ。

トロッコ道の近くにも面白いものがある。屋久杉の切り株らしきものの上に新しい杉の赤ちゃんが芽を出していた。切り株の上にはコケも生えていて箱庭のようになっている。もののけの森の様な感じで幻想的だ。

嫌でもかと言うほどトロッコ道を歩いていくと、ようやく終点が見えてきた。

休憩所やトイレがあるので、ここで休憩を取ってから本格的な登山に入る。標識にはウィルソン株まで600メートルと書いてあるが、山道の600メートルなので今までのトロッコ道の様には行かないだろう。

縄文杉までは2500メートルだ。今の時間は朝の9時過ぎなので、このままのペースだとお昼前には縄文杉に到着する事が出来そうだ。気合を入れて山道登山を開始する。

トロッコ道の終点からウィルソン株までは屋久島の大自然の中をゆっくりと歩いていく。

途中には階段もあって、運動不足の身体にはちょっとキツイ。汗をかきながらゆっくりと自分のペースで歩いていく。

トロッコ道の終点から30分ぐらい山道を登り続けてウィルソン株に到着した。ウィルソン株には他の登山者もたくさんいたので、遅れていないとわかって少し安心した。ウィルソン株の中に入ると思っていたよりも広かった。10年前に来た時はとても狭いイメージだったのだけれども、記憶はどんどん風化していくのだろう。10年ぶりに屋久島を訪れてよかったと思う。ウィルソン株の湧き水はとても冷たくて美味しいので元気になる。株の中から上を見上げると、周りの屋久杉を見上げる事が出来てとても幻想的だ。

ウィルソン株でしばらく休憩してから縄文杉までの登山を再開する。

道は険しくなるのだけれども急ぐ事はないので、のんびりと景色を眺めながら歩く。途中で大王杉や夫婦杉を見る事が出来た。大王杉は縄文杉が見つかるまでは1番大きくて古い屋久杉だと思われていたのだ。縄文杉とほとんど変わらないぐらいの大きさがあると思う。貫禄も十分だ。

更に歩き続けて、やっと縄文杉に到着した。

展望台から眺める縄文杉は貫禄がある。登山者もたくさん集まっているので写真を撮るのも順番が出来てしまう。それでも今はオフシーズンなので空いていると登山ガイドさんが話している。我々も写真を撮ったりしながら、縄文杉を眺める。縄文杉から100メートルほど行った場所に休憩所があるらしいのでそこで昼ごはんを食べる事にした。

屋久島の大自然の中で食べる昼ごはんはとても美味しい。我々だけで静かにしていると屋久島の自然を肌で感じることが出来る。都会の喧騒から離れて屋久島の森の中でお弁当を食べていると、なんだかとても心が落ち着く。

縄文杉からの帰り道は同じ登山道を下っていく。

来る途中には見落としていた変わった屋久杉や自然いっぱいの風景に気付く事ができた。帰り道は気持ちにも肉体にも余裕があるからなのかもしれない。のんびりと、屋久島の自然を満喫しながら降りていく。途中で屋久シカとも遭遇したりできて大満足だ。

ゆっくりと周りの景色を堪能しながら登山道を戻ると、思っていたよりも早くトロッコ道の終点に到着した。トロッコ道の終点でちょっと休憩してから、トロッコ道を戻る。

帰りのトロッコ道はひたすら長く感じる。

10年前にも来た事があったのでトロッコ道の長さは知っていた。それでも、単調なトロッコ道をどこまでも歩いていくのは疲れる。後ろから来る登山者に抜かれながら、自分達のペースでゆっくりとトロッコ道を歩いた。途中でしりとりなどをやりながら歩いていったのだけれども、歩いても歩いてもトロッコ道は続く。

ようやく小杉谷橋まで戻ってきた。あと、もうちょっとで登山口だ。我々以外の登山者達は先に行ってしまってるみたいだが、あせっても仕方がない。ここまで来たら最後まで怪我のないように気を付けて歩き続けよう。

登る時には暗かったので登山口の近くの景色は見る事が出来なかった。

朝は小杉谷橋近くでようやく明るくなってきたのでそれ以前の景色は新鮮に見る事ができるのだ。小杉谷橋から登山口までの景色を堪能しながら歩く。小杉谷橋よりも下の景色は思っていたよりも迫力がある。

トロッコ道を歩いていると、下からガイドが走って近づいてきた。話を聞くとお客さんがポーチをどこかに忘れたらしい。小杉谷の休憩所まで確認に行くらしかった。ガイドはトランシーバーを持ちながら走ってトロッコ道を登っていった。大変な仕事だ。

登る時は暗くて判らなかったがトロッコ道は途中に手すりも何もない橋が何箇所かある。高さが10メートル以上もある橋なので高所恐怖症の人でなくても恐怖を感じる。暗くて景色が見えなければ恐怖も感じないのだけれども、逆に景色が見えてしまうので恐怖を感じるのだ。

ようやく登山口に戻ってきた時には5時近くだった。思ったよりも早く戻ってきたつもりだったのだけれども我々は最後の登山者のようだ。朝はたくさん車や登山者がいたのだけれども、車も人もほとんどいなくなっていた。

3日目はホテルの部屋の窓から綺麗な朝日を見る事が出来た。今日は普通の時間にホテルを出発して屋久島を観光する予定なので、朝食もゆっくりと食べて出発できそうだ。

本来の予定であれば、3日目の朝は8時ぐらいまでゆっくりと寝ている予定だったのだが、朝日を眺められるぐらい早く起きてしまった。2日目の夜は最後の夜なので、みんなで夜更かしをする予定だったが、縄文杉登山で疲れ果ててしまい、気が付くとテレビも付けっ放しで寝てしまっていたのだ。夜食用のおやつもほとんど食べていなかったし、楽しみにしていた枕投げ合戦も行われないまま、最後の夜は明けてしまった。縄文杉登山は思っていた以上に体力を消費していたようだ。それでも、早く寝たおかげで、朝日を見る事が出来たのは嬉しかった。

最終日はレンタカーで屋久島を一周する。今日のメインイベントは滝と西部林道だ。フェリーの時間は決まっているので、それまでに全てのイベントを終了させなければならない。夜更かししないで、早く起きる事が出来たので時間に余裕を持って観光できそうだ。

のんびりと朝食を食べた後にホテルをチェックアウトして、最初に千尋の滝を目指す。

千尋の滝に行く途中で道に迷っていると観光バスを発見したので、バスについていく。観光バスの目的地も千尋の滝だったので無事に到着する事が出来た。千尋の滝は一枚岩の上を流れてくる滝で、雄大な景観の中を流れている。

展望台は千尋の滝からかなり離れているので水しぶきや迫力は劣るのだけれども、千尋の滝の周りの屋久島の大自然や景観も含めて千尋の滝の魅力なのだろうと思った。

千尋の滝から大川の滝まではかなり距離がある。

途中は何も無いなだらかな直線の道が続いていたので、久しぶりに高速スピードの運転を楽しんだ。40分ぐらいの快適なドライブで大川の滝に到着した。

大川の滝は滝壺のギリギリまで行く事ができる。滝つぼの周辺は滝が落ちる勢いで風が舞っている。凄い迫力に圧倒される。滝壺の水はエメラルドグリーンに透き通っていてとても綺麗だ。屋久島の自然の美しさはこういう所でも感じる事ができる。

大川の滝から先は西部林道になる。

動物達の楽園だ。特に屋久サルは物凄い集団で群れを形成している。10年前に歩いた時にはちょっと恐ろしかったのを覚えているが、今回は車なので襲われる心配はないだろう。

西部林道も道路は綺麗に整備されている。少し高くなった場所から眺める海岸線と海と雲のコントラストはなんとも言い表せないぐらいに美しい。この景色が当たり前のように存在しているのだから、屋久島は素晴らしい。

屋久サルは群れをつくって道路を占拠している。

だが、ちょっと考えると道路が出来る前から屋久サルは屋久島で生息していたのだから、道路の方が屋久サルの生活圏に進入してしまった。道路を我が物顔で屋久サルが占拠していても、人間が文句を言う筋合いではないのだろう。それでも、車が近づくと屋久サル達は怪我をしない程度に車から離れる。

これだけ観光客が屋久島に訪れているのに人を襲ったりはしないようだし、人や車を恐れている様子もない。観光客も屋久島に住んでいる人達も動物達とちょうど良い距離を保っているのだろう。

更に西部林道を進んでいくと、道はどんどん細くなっていった。対向車もほとんど来ない。屋久サルや屋久シカ達の生活圏に入り込んでいるのだ。なんとなく動物達の世界に迷い込んでしまったような感じがする。

西部林道を通り抜けると永田浜に到着した。

やっと、人の世界に戻ってきたような感じだ。季節はずれなのでウミガメの産卵で有名な永田浜にはウミガメも観光客もいない。我々だけで広い永田浜を独占しているようで気持ちが良い。空はどこまでも青く、雲はどこまでも白く、海はどこまでも広い。12月の永田浜を独占できた。

ジェットフェリーの時間は遅れる事が出来ないので、少し余裕を持って港に帰ってきた。

思ったよりも時間が余ったので、適当に港の周りを歩き回りながらフェリーの時間を待つ。港の周辺は屋久島でいちばん栄えている様で、公園や看板や歩道が綺麗に整備されている。もう少し、楽しみたいと思いつつも時間はあっという間に過ぎてしまった。

屋久島の大自然は年間降水量の多さに支えられている。屋久島は雨の多い島だ。しかし、幸いな事に我々が滞在している3日間は雨に降られる事がなかった。俺の晴れ男パワーの強さを改めて感じる事が出来た。

ジェットフェリーが鹿児島港に到着した時には空が暗くなり始めていた。

来た時と同じ道をバス乗り場に向けて歩く。来る時はテンションが高かったのだけれども、帰りは疲れているのでみんな無言だ。大きな荷物を背負って、夜の鹿児島を歩く。数日ぶりの都会だ。

空港行きのバスはすぐに来たのだけれども、空港に到着するのは飛行機の出発時間ギリギリになりそうだ。焦っても仕方がないので、バスの座席にゆったりと座って空港に到着するのを待つ。バスが空港に到着したのは飛行機出発の15分前だった。ちょっと焦りながらもチェックインを済ませて、そのまま飛行機に乗る。お土産を買う時間も無かったが、飛行機に間に合ってよかった。

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