パーテム国立公園観光

2004年5月に行ったパーテム国立公園のご紹介。

5月5日の昼過ぎにラオスからタイに入国し、バスやトラックを乗り継いでコンチアムの村に到着したのは夕方の4時ぐらいだった。コンチアムの村に来た目的はパーテム国立公園に行くためだ。パーテム国立公園は石器時代の壁画が残されている国立公園らしいのだが、観光地としては無名に等しい様で情報も公共交通機関もほとんど無い。なのでレンタルバイクを借りて観光をする事にした。

コンチアムの村では英語を話せる人がほとんどいない。レンタルバイク屋さんを探したり、パーテム国立公園までの行き方を聞いたりするだけでかなり大変だったが、明日の朝にはレンタルバイクでパーテム国立公園を観光できそうな手筈が整った。あとは時間通りにバイクを貸してもらえるかどうかが問題だ。時間通りに準備してもらえるようにレンタルバイク屋の兄ちゃんに何度も時間を確認する。

5月6日は8時にレンタルバイクを借りる予定だったが、俺が起きた時には既に8時だった。寝坊してしまった。レンタルバイクは約束通りに8時には借りれる状態になっていた。レンタルバイク屋の兄ちゃんに申し訳ない事をしてしまった。急いで身支度をして、8時半には出発した。

久々のバイクの運転で少しは不安があったが思ったよりもすぐに慣れる事が出来た。日本とは法律が違うのでヘルメットなど要らない。ヘルメット無しで運転するのは初めての体験だ。顔や頭に風を感じながら走るのは想像していたよりも気持ち良い。コンチアムの村の中心のガソリンスタンドで俺にもバイクにもエネルギーを入れてから出発する。

道は大体が舗装されているので走りやすい。パーテム国立公園に到着してゲートで200バーツを払って入場する。値段設定はとても高いが仕方がない。入場ゲートを過ぎてからしばらく走るとキノコのような岩がある場所に到着した。バイクを降りて近くまで向かう。キノコのような岩の近くまで登る事ができるので行けるところまで登ってみる。上の方はちょっと眺めがよい。そして地面には深い亀裂が走っていた。この亀裂がどんどん大きくなりキノコのような岩が切り出されるのかなと想像できた。

キノコのような岩の近くには看板があった。どうやらここからさらに奥の方にはビジターセンターがあるようだ。ビジターセンターには国立公園内の地図や壁画の説明があるかも知れないので行ってみる事にした。

ビジターセンターには巨大な駐車場があり、お土産屋さんやレストランが付属していた。とても綺麗で近代的に整備されていたので驚いてしまった。巨大な駐車場もごく一部しか使用されておらず、コンチアムの村の規模からするとどうしてこんな立派な施設を作ることが出来るのだろうと不思議に思ってしまう。気のせいかもしれないが、どことなく日本の観光地のビジターセンターのレイアウトに似ている感じがする。

利用者としては建物が綺麗なのは嬉しい事だ。まずはビジターセンターで情報も収集する。国立公園内の地図や壁画の情報を手に入れる事が出来た。とても役に立った。ビジターセンターには資料展示室のような場所もあったので、壁画の観光の前にビジターセンターの内部も見学する事にした。展示室の中にはナマズ殿下一家が視察に来た時の写真がたくさん展示してある。数年前にナマズ殿下一家がこの遺跡を視察に来ていたらしい。ナマズ殿下一家がこんな無名な観光地を視察するとは驚きだったが、タイの田舎でナマズ殿下一家のエピソードを知ることが出来てなんとなく気持ちがほぐれる。

あとになってから考えるとパーテム国立公園の施設が立派なのも、ビジターセンターが日本的なレイアウトなのも、ナマズ殿下一家が視察に来ているのも、日本の開発援助団体が資金提供しているからなのかもしれないと思った。それに殿下はタイでナマズの研究をしていたはずなので、タイとは昔から友好的な関係なのだろう。ただ、あまりにも無名で観光客が少ない施設に見合わない莫大な資金を投じる日本政府関係団体の税金の使い方のセンスの無さには呆れてしまう。

ビジターセンターを見学しているうちにお昼になってしまったので、ビジターセンターに併設してあるレストランで食事をする。レストランは綺麗で立派だし値段も高めに設定されているが、肝心の食事はあまり美味しくない。街中の綺麗とはいえないレストランや屋台の方が美味しいタイ料理を提供してくれる。

簡単に食事を済ませてから壁画を見に行く。壁画の入り口には説明の看板がある。壁画を見るには4キロほど歩くようだ。壁画は思っていたよりもボリュームがあり時間がかかりそうだ。

ビジターセンターの隣の入り口から崖の下に降りて行く。遊歩道は綺麗に整備されている。壁画の一つ一つの場所に看板がありぞれぞれの壁画の説明が書いてあった。とても親切な説明や解説がありがたい。宇宙人手形などの壁画が崖の中腹に書いてある。古代人はどのようにしてこのような崖に壁画を書いたのだろうかと不思議に思う。

歩きやすい遊歩道があると言っても、登ったり降ったりを繰り返しながら歩くのはかなり大変だ。壁画は何箇所にも点在しているので仕方がないのだが、最後は壁画への興味よりも疲労感の方が強くなってしまった。それでも歩くしかない。ようやく崖の上に出る場所にたどり着く事が出来た時にはかなり疲労してしまった。崖の上にも壁画があり、ベンチもあったので少し休息をとる事にした。

崖の下から地上に戻ってからもビジターセンターまでは歩いて戻らなくてはならない。道は整備されているので、疲労した身体にはありがたい。クーラーが効いているビジターセンターで休憩して体力を回復させて次の場所に向かう。

パーテム国立公園には壁画以外にも滝があるようなのでバイクで行ってみる。しかし、どこがどのように滝なのか良く判らない。看板があるので雨季には滝になるのだろうが乾季の今は水が流れていないので、説明が無ければ滝だという事が全く分からない。乾季の滝を見て莫大な資金援助を受けたパーテム国立公園をあとにした。

せっかくバイクという機動性がある乗り物をレンタルしているのだからパーテム国立公園以外の観光地も行くことにした。コンチアムの村でもらった地図にはとよく判らない観光地らしきものが載っていた。パーテム国立公園からは滝の方が遠かったので、まずはよく判らない観光地に行ってみる事にした。

地図に記載されているよく判らない観光地に向かうが、なかなかたどり着かない。途中にある小さな村を越えると舗装道路は終わってしまった。地図に記載されている辺りに到着したが何もない。なんとなくおかしいなと思いつつも道は一本なのでさらに奥まで進んでみた。しばらく走ってみたがこれ以上奥には何もなさそうなので諦めて引き返した。地図に記載されている観光地は判らないままとなってしまった。

今度は気を取り直して滝に向かう。滝は地図に載っている場所に存在していたので安心した。SOISAWANの滝と言うらしい。発音は良く判らないがソイサワンとでも発音するのだろう。駐車場もあるのでそこにバイクを止めて滝の下のほうまで降りていく。

この滝もほとんど水がないので雨季には川底になっているだろう場所に降りて行く事が出来る。滝つぼだろうと推測されるところには水が溜まっていてプールのようになっている。水の流れはほとんどない。現地の家族連れがピクニックにやってきていた。滝つぼのプールの傍らに御座をひいてお弁当を広げている。子供たちは滝つぼプールで遊んで全身ずぶ濡れでとても楽しそうだ。そのうちに酔っ払ったお父さんまで滝つぼプールに入って子供たちと遊びだした。

ほとんど水の流れていない滝つぼでマイナスイオンを感じているうちに、なんとなく家族と仲良くなった。お母さんのような人に呼ばれて家族と一緒に弁当をご馳走になる。みんなタイ語しか話せないのでタイ語の判らない俺とは意思疎通が難しいが、伝えたい気持ちはジェスチャーで何とかなってしまう。お姉ちゃんが片言の英語が出来るようなので彼女を通訳にして話をする。日本から観光できている事などを説明すると喜んでくれた。家族たちと戯れながら楽しい時を過ごす事ができた。

睡眠薬強盗の話はタイやベトナムでも聞いた事があるが、この家族からは不穏な感じを受けなかった。もし俺が睡眠薬強盗だったら、観光客などほとんど来ない滝ではなく、もうちょっと観光客がたくさん来る場所で獲物を狙う。睡眠薬強盗だとしたら余りにも効率が悪すぎる。最低限の警戒は怠らないが、彼らと楽しいひと時を過ごす事が出来た。彼ら一家は純粋に親切な家族だった。お母さんが作ってくれたお弁当も美味しかった。

滝つぼでタイ人家族達と楽しいひと時を過ごした後はダムを見に行った。小さなダムだったので観光用に開放されている訳ではなさそうだが、ゲートで誰にも引き止められなかったので勝手に観光をしてきた。ダムの上から見下ろすと放水している様子は無かった。ダムの下では網で魚を獲っている人がいた。何度も何度も網を投げていたが、魚はぜんぜん捕まっていないようだった。

ダムからコンチアムに戻る途中でツーリスティックなお寺を見つけたので寄ってみる事にした。寺は崖の上に建っていて、崖の中腹に降りていけるようになっており洞窟のような雰囲気の建築構造になっていた。洞窟の奥には仏像が安置されていた。綺麗に整備された洞窟のような感じでなんとなく雰囲気が良い。建物の上は展望台のようになっていて、コンチアムの村を一望できた。

夕方の5時ぐらいにコンチアムの村に戻ってきた。今日は1日中観光をしていたのでかなり疲れてしまった。レンタルバイクを返してから少し宿で休息をとる。休息で疲労が回復したので夜のコンチアムも見てみる事にした。外を散策してみるが8時だというのに誰も歩いていない。ゴーストタウンの様に静まりっており、元気なのは犬ぐらいだった。

5月7日はチェックアウト時間ギリギリに起きてバスターミナルに行く。バスターミナルで昼食を食べながらウボンラチャタニに行くバスが来るのを待つがなかなかバスはやってこない。バスターミナルで何事かをしている兄ちゃんはもう少しでバスが来るというが、一向にバスが来る気配を感じない。

仕方がないのでバスで移動するのは諦める事にした。幹線道路がある場所まで歩いてヒッチハイクを試みてみる。30分ぐらいヒッチハイクをしていると中国人の車がウボンラチャタニまで行くというので乗せてもらう事にした。バスを待っていたらいつになってもコンチアムの村を脱出できなさそうだったので助かった。

ウボンラチャタニからは夜行列車でバンコクまで行く事ができる。

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