アンコールワットツアー

2004年3月に行ったアンコールワットのご紹介。

3月24日の昼にバンコクを出発してタイカンボジアの国境の町のアランヤプラテットに向かう。アランヤプラテットまでは列車で移動する。バンコクの駅を昼に出発した列車がアランヤプラテットに到着したのは夕方の6時を過ぎていた。明日は国境を越えてカンボジアのシェムリアップを目指す。シェムリアップはアンコールワット観光の拠点になっている町だ。

3月25日の朝に国境を越えてカンボジアに入国した。入国してすぐにシェムリアップに向かうピックアップトラックを探す。ピックアップトラックはトラックの荷台に人や物や家畜を乗せて移動するカンボジアの移動手段のひとつだ。日本ではトラックの荷台に人を乗せると道路交通法違反になってしまうが、カンボジアではトラックの荷台が重要な交通手段のひとつとなっている。ピックアップトラックは時刻表や出発時間などなく満員になったら出発するらしい。かなりいい加減だが、そういうシステムの場所に来ているのだから、ありのままを受け入れるしかない。

ピックアップトラックが出発するまでは客が集まるまでひたすら待つだけだ。1時間以上待った末に、ようやく俺が乗り込んだピックアップトラックが出発するらしい。このピックアップトラックの荷台でスリに遭遇してしまったが、何も被害はなかったので幸いだった。悪路の中をピックアップトラックはシェムリアップを目指して走る。お尻が痛いが値段が安いので我慢しなくてはならない。

夕方にはシェムリアップに到着する事ができた。バンコクで情報収集してきた有名な宿に宿泊して、明日からのアンコールワット観光に備えることにした。

アンコールワットは巨大な遺跡群の集合体であるため、1日で全てを観光する事は不可能に近い。入場券も1日券や3日券や1週間券が売られているぐらいで、十分に時間をかけて観光する価値があるようだ。歩いて周るにはちょっと難しいぐらいの広い地域に遺跡群が点在しているのでトゥクトゥクと言うバイクを改造して荷台に人が乗れるようにな乗り物をチャーターしてアンコールワット観光をする。俺は3日券を買ってアンコールワットを堪能する事にした。

3月26日の朝は3時半に起きて5時半には宿を出発する。アンコールワットから見る朝日はとても綺麗だというのだ。アンコールワットからの朝日を見るためにまだ暗い早朝に出発する。昨日予約したトゥクトゥクの運転手さんはちゃんと時間通りに迎えに来てくれた。まだ暗い道をトゥクトゥクの荷台に乗ってアンコールワットを目指す。他にもたくさんのトゥクトゥクやツアーバスがアンコールワットを目指して走っている。夜明け前の空気は寒い。

暗いアンコールワットに到着した時には朝日を目指している観光客を乗せたトゥクトゥクやツアーバスで混雑していた。みんな求めているものは同じなのだろう。観光客の流れに乗ってアンコールワットの遺跡の中に入っていった。入り口の門の近くでアンコールワットから太陽が顔を出すのを待つ。周りにはカメラを構えた観光客でいっぱいだ。遺跡から太陽が顔を出す瞬間を待つうちにみんなの思いはひとつになる。太陽が顔を出した瞬間には何処からともなく、歓喜の声があがった。

アンコールワットは春分の日秋分の日には正面から太陽が昇るように設計されていて、門からアンコールワットと朝日が一直線に見えるのだ。この日は春分から一週間ぐらいしか経っていないため、アンコールワットから登る太陽を見る事ができた。感激だ。

太陽が昇りきった後に、アンコールワットの内部を見学をする。十字回廊第一回廊のレリーフを見に行く。第一回廊の全面に描かれているラマヤーナ物語のレリーフはとても綺麗で素晴らしい。レリーフを見た後に中央塔に登る。中央塔は上まで登る事が出来たのでそこからの眺めがとても素晴らしかった。第一回廊のレリーフはたくさんの人が居たのだが、中央塔は観光客が少なくい。静かな環境で遺跡の雰囲気に浸りながら見学できた。ツアーで来ている時間的に余裕のない観光客は中央塔の上までは見学の時間がないようだ。

アンコールワットの遺跡を十分に満喫して出てきたのは10時ごろだった。トゥクトゥクの運転手さんはいつまでたっても戻ってこない客がどこかではぐれてしまったのではないかと心配になり、探してくれたらしい。運転手に心配をかけてしまった。申し訳ない。

トゥクトゥクの運転手さんはカンボジア人で日本語も英語も話す事ができない人だった。なので、地図を見せたり、ジェスチャーなどで意思の疎通を図る。しかし、言葉はお互いに判らなくても、彼は観光客の求めているものをなんとなく理解してくれて、それをタイミングよく提供してくれる。そういう能力があるから、言葉が出来なくてもトゥクトゥクの運転手として仕事が出来るのだろう。たくさんの言葉を話せることよりも観光客の求めているものを理解する能力の方がトゥクトゥクの運転手として仕事をするうえでは重要なのではないかと思う。

アンコールワットの次はトゥクトゥクに乗ってプノンバケンに向かう。プノンバケンは小高い丘になっていて頂上に遺跡がある。頂上の遺跡にはほとんど人がいないので貸しきり状態で見学することができた。プノンバケンの頂上からジャングルの木々に埋れているアンコールワットの遺跡群を見下ろす事ができた。

次はアンコールトムの遺跡に向かった。アンコールトムは単独の遺跡ではなく遺跡群になっている。アンコールトムの中心にあるバイヨンでトゥクトゥクを降ろしてもらい見学を開始する。バイヨンには巨大な四面の仏像の顔の塔が乱立している。崩れかけているものや、形が綺麗に残ってるものがあり、それぞれに特徴的で面白い。奥に行くと第一回廊があり、レリーフが綺麗に残っている。アンコールワットよりも規模が小さく修復もされておらず、途中で通路が崩れ落ちている場所もあったが、当時の面影を想像し、時間の経過を感じながら見学することができた。

バイヨンの見学を終えた後は隣のバブーオン、王宮、ピミアナカス、王のテラス、プリアパリライ、象のテラスを連続で見学する。ジャングルに飲み込まれて朽ち果てた遺跡群の姿が過去の栄光を伝えているようだった。アンコールトムは年代によって古い遺跡の上に新しい遺跡が重ねて造られているので面白い。

観光客も少なかったので比較的のんびりと観光してまわることが出来た。プリアパリライでは現地の女の子たちが遊び場にしているようだった。飲み終わったペットボトルをあげると喜んでくれた。

ずっと歩いて見学していたため途中からは疲れが蓄積してきて精力的に観光する事が出来なくなってきた。像のテラスに行くころにはかなり体力を消耗してしまった。象のテラスを見学した後に近くを見渡すと、サトウキビジュース売りの屋台がいた。迷うことなくサトウキビジュースを飲むことに決定する。屋台はサトウキビをプレスする機械サトウキビおっちゃんで構成されている。おっちゃんにジュースを頼むと、機械の電源を入れてサトウキビの幹を1本プレス機にかけて潰した。するとサトウキビジュースが搾り出されてくる。それを袋に入れてストローを刺して出来上がりだ。水も砂糖も余分なものは一切入っていない100%天然のサトウキビジュースが完成した。

炎天下の中、歩き回って疲れ果てている俺の身体にサトウキビジュースが染込んでいく。思わず2杯も飲んでしまった。

その後、近くの遺跡を見学しながらトゥクトゥクの運転手さんと待ち合わせしている場所に向かって歩いていった。途中で現地の若者たちがバレーボールをしているのをみつけた。楽しそうにバレーボールをしているのを見ているうちに、俺もやりたくなってきたので一緒にやらせてもらう事にした。久しぶりのバレーボールだったのに加えて現地の若者との交流が出来て楽しかった。

夕方になってきたので、夕日を見るためにプノンバケンに戻ることにした。午前中には誰もいなくて貸しきり状態だったプノンバケンは夕日を見るために集まってきた観光客でとても混んでいた。朝日や夕日の美しさは万国共通なのだろう。見晴らしの良い場所にはみんなが集まる。西の空は雲が少し出ていたが、綺麗な夕日と夕焼けを見ることが出来た。

宿に戻る途中にはすっかり夜になってしまった。アンコールワット観光1日目は十分に楽しむことが出来た。

3月27日の朝も5時に起きてアンコールワットの朝日を見に行く。今日の朝日は綺麗に見ることが出来なかったが、朝焼けを見ることが出来たので満足する。朝日が昇ってすぐにバンテアイスレイに向かう。バンテアイスレイはアンコールワットの遺跡群からは少し離れているので、トゥクトゥクで30分ぐらい走らなくてはならない。そこには東洋のモナリザと言われている女性のレリーフがあるのでそれを見に行くのだ。

バンテアイスレイは他の遺跡と比べると小さいのであっという間に見学が終わってしまいそうだが、その小さな遺跡に観光客がたくさん押し寄せている。昨日の遺跡はほとんど人が居なかったので、バンテアイスレイの人気には驚いた。他の遺跡とは違う繊細で綺麗なレリーフがたくさん残っており、期待以上の遺跡だった。観光客で混んでいる理由も納得できた。

たくさんの綺麗なレリーフを堪能しながら遺跡を見学していたら、東洋のモナリザを見る前に出口に来てしまった。東洋のモナリザを見つけることが出来なかったのだ。仕方がないので東洋のモナリザの場所をもう一度確認してから、遺跡に戻り東洋のモナリザを探してみた。どのレリーフも東洋のモナリザと言える位の完成度があるので、どれが東洋のモナリザだと言われても不思議ではない。ようやく教えてもらえた東洋のモナリザを発見することが出来たが、どのレリーフもそれぞれの表情が残っていて美しい。

遺跡の外は屋台が店を出していた。ちょっとお腹が空いてきたので、ニューメンというカンボジアでは日常的に食べられているだろう麺類を食べる。早朝から何も食べずに遺跡観光をしていたのでとても美味しい。

次にバンテアイサムレに向かった。トゥクトゥクは軽快に飛ばしていく。バンテアイサムレの中に入ると中二階の通路を通るような、どことなく違和感がある遺跡だった。どうやら、雨季になると中二階の通路だと思っていた床の直ぐ下まで水で満たされて美しい風景になるらしい。面白いつくりになっている遺跡だ。

バンテアイサムレの後は東メボンの遺跡を見て、タ・ソムに向かった。タ・ソムは半分崩れているような遺跡だったが、遺跡に木が絡み付いて生えている遺跡だった。その光景には長い年月の経過を感じた。タ・ソムの次にニャックポアンに向かった。ニャックポアンは広場の遺跡だ。広場の中心に大きな祠があり、四方に小さな祠がある。雨季には広場が水で満たされて中心の大きな祠が水に浮いているように見えるらしい。今度は雨季に来てみたいと思った。

次にプリア・カンの遺跡に行く。かなり広い遺跡で見ごたえがある。回廊にはレリーフが描かれており、寺院の奥まで進んでいくことが出来た。一番奥には蛇で綱引きをしている像があった。早朝から駆け足で見学しているのでプリア・カンを歩き回っているうちに疲労が蓄積してきたようだ。炎天下の中を歩き回っているので疲れない方がおかしいのかもしれない。

プリア・カンの次はアンコールトムの近くを通ってタ・ケウに行く。アンコールトムの近くを通るときに昨日のサトウキビジュースの屋台を見つけたので少し休憩することにした。サトウキビジュースの甘さが身体に染込んでくる。サトウキビジュースで元気を回復したので炎天下の観光を続ける事ができそうだ。

タ・ケウの遺跡は高いので見晴らしがよさそうだ。急な階段を登っていく。炎天下の中の階段はかなりきついが、高いところが好きな俺はがんばって登る。タ・ケウの遺跡の頂上からの眺めは素晴らしい。この眺めを見ると、少しだけ疲れが軽くなった感じがする。

次にタ・プロームの遺跡に向かった。タ・プロームは遺跡の上に木が覆いかぶさるように立っていて面白い。人間に見放された遺跡は長い年月を掛けながら森と一体化しているのだろう。俺が見ている今は森と一体化する時間の途中なのだろうと感じた。遺跡の上に木が生える事で遺跡は崩れてしまうかもしれないが、それが自然の姿であるのだから、あえて修復などせずに遺跡が自然に戻っていくのを邪魔しないで欲しいと思った。

タ・プロームの遺跡は思っていたよりも広く歩き回ることが出来る。たくさんの観光客のグループがいて賑わっているが、メインの観光ルートから少し外れた場所は観光客がほとんど居ないのでなんとも言えない良い雰囲気がある。有名なレリーフや建物ではなく、崩れかけた回廊があるだけなのだが、タ・プロームの遺跡がひっそりと森の中で過ごしてきた時間の長さを感じることが出来る。

遺跡の中の人気の無い所を歩いていると鍋を持って座っているおばちゃんを発見した。おばちゃんの周りでは適当に遺跡に座ってニューメンを食べている人がいる。遺跡の修復作業をしている人たちみたいだ。ちょうどお腹が空いてきたので俺も、ニューメンを食べたい事をおばちゃんに伝えた。おばちゃんは観光客の俺にもニューメンを売ってくれた。タ・プロームの遺跡で食べるニューメンの味は格別だった。

最後はバンテアイクデイに向かった。バンテアイクデイも他の遺跡と同じような雰囲気の遺跡だ。2日間も遺跡を巡っているのでどの遺跡も同じように見えてくる。バンテアイクデイも崩れかけた回廊を持っている遺跡だったが、今も信仰されている仏像が安置されており、少し他の遺跡とは雰囲気が違っていた。

バンテアイクデイの後は夕日を見るためにプノンバケンに行ったが、曇っていて夕日が出ていないということで登らせてもらえなかった。そんな日もあるだろうと宿に戻ることにした。

3月28日の朝も朝日を見に行くために早朝に出発する。今日はトゥクトゥクではなく自転車をレンタルして遺跡観光をする。いつもより時間に余裕を持って少し早めに宿を出発してアンコールワットに向かう。今日の朝日も綺麗だったが、初日の朝日が一番綺麗に見る事が出来た。朝日が昇りきってからはアンコールワットの内部をもう一度観光する。初日に見逃している部分があるのでそれを含めてもう一度、アンコールワットを堪能するのだ。回廊をゆっくりと巡る。修復されているせいもあるだろうがアンコールワットのレリーフが一番綺麗に描かれている。レリーフを十分に見た後に中央塔に登った。中央塔の上でゆったりした時間の中でアンコールワットの世界を感じる。午前中はアンコールワットの中でゆっくりしているだけで終わってしまった。

昼前にホテルに戻って少し休憩する。自転車だと時間を自由に使うことが出来るのでうれしい。午後からはプリアコーの遺跡に行く。シェムリアップからは10キロぐらい離れているので自転車だと1時間ぐらいで行くことが出来そうだ。郊外を抜けてきたところでタイヤがパンクしてしまった。一気に俺のテンションは落ちてしまった。仕方がないのでホテルに引き返すことにした。

パンクした事を告げると新しい自転車を貸してくれたのでシェムリアップの市場などをブラブラと自転車で見てまわってホテルに戻った。するとパンクしたはずの自転車が直っていたので驚いた。カンボジア人の仕事の早さにはびっくりした。気を取り直してプリアコーの遺跡までサイクリングすることにした。久々にサイクリングの1日を楽しむことが出来た。

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