ナミブ砂漠ツアー

2004年1月にレンタカーで行ってきたナミビアにあるナミブ砂漠ツアーのご紹介。

2003年の12月29日の朝、ナミビアの首都のウイントフックに到着した。これで、半年ぐらい前から目標としていた2004年の初日の出をナミブ砂漠で見る事が出来そうだ。そのためにクリスマスにブエノスアイレスを出発し、ケープタウンでも喜望峰の観光を諦めて旅路を急いでいた。その甲斐があって、日程ギリギリでナミビアの首都に到着する事ができた。

ナミブ砂漠に行くにはツアーを利用するか、レンタカーで行くかのどちらかしか方法はない。俺は国際運転免許証を持っているので、2004年の初日の出を見たい人を何人か集めてレンタカーをシェアしてナミブ砂漠に行きたい。宿でナミブ砂漠に行く人を探してみると俺を含めて日本人3人が集ったので、この3人でレンタカーをシェアしてナミブ砂漠に行く事にした。出発は31日の朝だ。それまでにレンタカーを借りに行ったり、食材を買いに行ったり、両替に行ったり、情報を集めたり、ナミブ砂漠に行く準備を万全に整えなければならない。ウイントフックは小奇麗な都会で、必要なものはたいていなんでも揃える事ができる。

レンタカーは2泊3日借りる事にした。最初にナミブ砂漠でも壮大な眺めが見れるデューン45とソススフレイに向う。ここで2004年の初日の出を見る。その後は大西洋岸の街のワルビスベイとスワコプムンドを観光し、その辺りでもう1泊する。そして、3日目の昼前にウイントフックに戻ってくるのが我々の予定だ。

12月31日の昼頃に約束どおりにレンタカー屋が宿に迎えに来た。レンタカー屋で必要書類に記入して、これからお世話になるレンタカーの確認する。レンタカーを借りる時には一番重要なチェックポイントはタイヤの耐久性だ。過去にレンタカーを借りた時にはタイヤのパンクでひどい思いをしたことが2回もある。スペアタイヤまで確認して鍵を受け取る。今回のレンタカーのタイヤはそんなに磨り減っていないので途中でパンクしてしまう事はなさそうだ。

レンタカーの鍵を受け取ったら、荷物を積み込んで出発する。ウイントフックの郊外を抜けると交通量が少なくなり綺麗な舗装道路が続いていてとても走りやすい。ある程度運転に慣れたらスピードを上げて砂漠を目指す。今日の目的地はセスリウムというキャンプ場だ。夕方には砂漠のキャンプ場に到着したい。

安全運転に心がけながら、出来るだけ急いで運転する。このままのスピードで行けばかなり早い時間にセスリウムに到着できそうだ。途中までは順調に走っていたが、幹線道路から外れてセスリウムの方向にむかいはじめると砂利道になってしまった。これではスピードが半減する。ハンドルを取られないように慎重に砂利道を走っていたがいっこうに舗装道路になる気配がない。地図を見る限りではセスリウムまで砂利道がずっと続きそうだ。しばらく砂利道を走っていると、だんだんと砂利道の運転にもにも慣れ、ある程度のスピードで運転出来るようになってきた。このぐらいのスピードだったら太陽があるうちにセスリウムに到着する事ができそうだ。

頑張って砂利道を走った甲斐があって太陽があるうちにセスリウムのキャンプ場に到着する事ができた。キャンプサイトの受付でキャンプの申し込みをする。キャンプの受付の兄ちゃんがキャンプ場から数キロ先にセスリウムキャニオンがある教えてくれたので行ってみる事にした。こういう時にレンタカーのがあるのはとても便利だ。

セスリウムキャニオンを探しながらレンタカーで走っていくと何台かのレンタカーが駐車場らしき広場に止まっていた。きっとそこがセスリウムキャニオンの駐車場だろう。我々もそこにレンタカーを止める。足跡があるほうに歩いていくと地面に裂け目が現れた。深さは20メートルぐらいありそうだ。その裂け目がセスリウムキャニオンのようだ。裂け目の中を見るとツアー客が歩いている。どうやら、セスリウムキャニオンの中に入ることが出来るみたいだ。下にいるツアー客にどこから入ったのかを教えてもらい、我々も下に降りて行く。セスリウムキャニオンの中は思っていた以上に広い。裂け目の幅は広いところでは10メートルぐらいはあるが、狭いところは身体1つ分しかないところもある。裂け目の距離は歩いた部分で100メートルぐらいはあると思う。

セスリウムキャニオンから出てきたら夕日が沈むところだった。2003年の最後の夕日はセスリウムキャニオンから眺める事が出来た。美しい夕日だった。キャンプサイトに戻ってから、夕食を食べてすぐに眠る。明日の朝は早いのだ。夜中の12時ごろに周りのキャンプサイトの人たちが新年を祝って、花火を上げて騒いでいるので目を覚ましたが初日の出の方が大切なのでそのまま眠ることにした。

2004年の1月1日の朝は5時に起きた。初日の出を見るポイントはデューン45という砂丘からの眺めが美しいと聞いている。なので、デューン45を目指してキャンプサイトを出発し、まだ暗い中をレンタカーで走る。道はデコボコで途中に穴が開いているので気をつけながら運転する。途中でツアー会社のマイクロバスに追い抜かれたが、事故を起こしてしまっては困るので無理はしない。だんだんと辺りが明るくなり運転しやすくなってきた。しばらく、するとデューン45の砂丘が見えてきた。我々を抜かしていったマイクロバスが止まっているので、確実にそこがデューン45だとわかる。

初日の出が昇るまでにはまだ時間はあるみたいだ。先に登っているマイクロバスのツアー客の後を追いかけるように砂丘を登る。砂は思っていたよりも冷たくて歩きにくい。途中からはサンダルを脱ぎ捨て素足で砂丘を登り始めた。砂が冷たいので素足で歩くのは気持ち良い。頂上と思える場所で太陽が昇ってくるのを待つ。しばらくすると、太陽が昇ってきた。2004年の初日の出だ。砂漠の地平線から昇る太陽はとても綺麗だ。ツアー客も我々もそこにいる人みんなが太陽が昇る姿に心を奪われてしまった。感激の一瞬だった。

太陽が昇りきったのを見届けてからデューン45の砂丘を駆け下りる。砂丘を降りるのは雪山を駆け下りているようで面白い。デューン45の麓に停めてあるレンタカーで朝食のサンドイッチを食べて少し休んでから、さらに奥にあるソソフスレイに向う。

ソソフスレイの手前の5キロぐらいの場所までしかレンタカーではいる事はできない。駐車場があるのでそこにレンタカーを止める。ここからは、ジープに乗ってソソフスレイに向うのだ。一緒に初日の出を見たマイクロバスのツアー客も同じ場所でマイクロバスから降りている。彼らのガイドが先導してどこかに歩いていくみたいだ。この近くに面白い場所があるかもしれない。せっかくなので取るものも取らずに彼らについて行くことにした。

すぐ近くだと思っていた目的地は結構遠いみたいだ。しばらく歩いているうちに彼らと仲良くなったのでどこに行くのかを聞いてみた。すると、このまま5キロ歩いてソソスフレイに行くのだという。そうと知っていれば飲み水とお菓子ぐらいは持って来れば良かった。我々の足元はビーチサンダルで食べ物や飲み物は全部レンタカーの中に置いて来てしまった。後悔したが後の祭りだ。

しばらく歩いていると太陽がジリジリと照りつけてきた。気がつかないうちに砂は熱くなっている。朝日を見たときはとても清々しかったのにいつの間にか過酷な状況になっていた。レンタカーに戻って準備を整えてからもう1度ソソスフレイを目指そうかとも考えたが、この状況で迷子になってしまうと命の危険があるので、このままツアー客の彼らについて行く事にした。幸いだったのは野生のスプリングホップを見れたことだろう。

まだ、午前9時だというのに砂漠は灼熱地獄そのものだ。そんな中を水も食料も無しで歩いていく。ようやく目的地のデッドフレイに到着した。ここは1000年前に湖が蒸発してしまった場所なのだそうだ。そして、900年前に立ち枯れした木が今も立っている。そこから歩いて5分もしないところにソソスフレイはある。

ソソスフレイは砂漠の中の湖があるはずの場所なのだが、最近は雨が降っていないためソソスフレイの湖も干からびていた。水が干からびたであろう大地の跡しか見ることが出来なかった。湖が見れなかったのは少し残念だがこれも自然が相手なのでどうにもならない。ソソスフレイには送迎用のジープが待っていたので駐車場まで送ってもらった。水も食料もない我々には歩いて駐車場まで戻る元気はなかった。

駐車場に戻った我々は水分と栄養を補給した。レンタカーの中も蒸し暑くなっていたので水はお湯に変わっていたが、それでも水分が身体にしみこむ。駐車場からは蒸し暑くなったレンタカーに乗ってセスリウムに戻った。我々が泊まったキャンプ場にはプールがあるので、そこで泳いで暑くなった体を冷やす。プールは掃除をするために水を抜いている途中だったが、それでもかなり気持ち良い水浴びをする事が出来た。

午後1時ぐらいにセスリウムを出発して次の目的地のワルビスベイに向う。ダートの道をどこまでも走る。昨日よりも運転に慣れてきているので、見通しの良い直線ではかなりのスピードを出して運転できる。おかげで思っていたよりも早くワルビスベイに到着する事ができた。ワルビスベイはお洒落で小さな港町だ。

今日はかなり風が強くて外にでていると、吹き飛ばされそうになる。公園になっている入り江ではカイトをやっている人がいた。カイトはウインドサーフィンとウェイクボードを足したようなスポーツだ。今まで、そんな遊びがあるとは知らなかったが、見ているとなんとなく面白そうなスポーツだ。しばらく、カイトに見とれていた。近くにはフラミンゴの大群がいてカイトとフラミンゴのコントラストを見ることが出来た。

ワルビスベイで1泊しても良いと思ったが、まだ時間が早いので一気にスワコプムンドまで行ってしまう事にした。今だったら明るいうちにスワコプムンドに到着できそうな感じがする。

ワルビスベイからスワコプムンドまでは海岸沿いの舗装された道路が続いている。道路の右には砂丘が広がり左には大西洋が広がっている。荒涼とした素晴らしい眺めの中の舗装道路をドライブする。風が強いのでハンドルが取られないように気をつけながら気持ちの良いドライブが続く。日が暮れて、街灯に電気が灯り始めた頃にスワコプムンドに到着できた。

1月2日の朝は6時ごろに起きて出発する。昨日の道を少し戻って見晴らしの良い砂丘のポイントから景色を楽しむ。レンタカーは昼過ぎに返さなければならないので、それまでにウイントフックに戻らねばならない。スワコプムンドからウイントフックまでの道は舗装されており、天気も快晴で風も穏やかなので快適なドライブになった。俺は基本的に運転が好きなので、1日中運転をしていても飽きない。今まではほとんど車のいない田舎の道路ばかりを走っていたが、ウイントフックが近づいてくると交通量が増えてきた。それでも、時間に余裕を持っていたので順調にウイントフックに戻る事ができた。

ウイントフックの街の中を走り抜けて宿に到着した。事故にもあわずに無事にナミブ砂漠のレンタカーツアーを終了できた。後は宿にチェックインして荷物を降ろしてレンタカーを返却してくるだけだ。しかし、宿にチェックインしているほんの数分の間にレンタカーのガラスを割られて荷物を盗まれてしまった。盗まれた荷物は俺のパスポートと日記と国際免許証が入ったポーチだった。とりあえず現金は無事だったのが不幸中の幸いだろう。日記以外は再発行が出来るものなので仕方がないとしても日記は再発行をする事が出来ないのでとても悔しい。盗まれてしまった物はもう戻ってはこないので諦めるしかない。高い授業料になった。

気持ちを切り替えて、やらなければならない事をやる。宿の人に付き添われて警察署に行って被害届を発行してもらう。それから、大使館や保険会社に連絡を取りレンタカー会社にも行く。しかし、正月の2日なので大使館は完全に休みだし、保険会社も東京の本社が正月休みなのでどうにもならない。

なんだか、最後の最後に最悪な事になってしまった。パスポートを再発行するために数日はウイントフックで過ごさなければならないので、旅は1週間ほど中断することになった。

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