ブエノスアイレスの地下鉄

2003年のアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに滞在中に乗った地下鉄の話のご紹介。

ブエノスアイレスは巨大な都市なので市内を数路線の地下鉄が走っている。このブエノスアイレスの地下鉄は路線によって個性があるので面白い。俺は半年以上のブエノスアイレス滞在中に地下鉄を利用する事が結構あったので乗り比べてみた。

新しい地下鉄は乗り心地も良く、日本の地下鉄と変わらないぐらいのクオリティーがあり、普通の地下鉄だ。しかし、ブエノスアイレスの地下鉄には不思議な路線が存在している。

市内を移動するために乗った地下鉄に驚かされてしまったのだ。俺が乗った時は通勤ラッシュの時間帯ではないのでホームで地下鉄が入ってくるのを待ってる人数はそんなに多くない。ホームに入ってきた地下鉄は俺が思っていたよりも古い車両だった。そこまでだったらちょっと古い普通の地下鉄だったのだが、そこからが驚かされた。他の乗客に続いて地下鉄の扉の前で扉が開くのを待っていたが、いっこうに開かない。変だなと思ったら先頭に並んでいた乗客がおもむろに扉を開け、地下鉄に乗り込んだ。

なんとこの地下鉄の扉は自動ではなく手動でひらく様になってるのだ。乗客の流れにそって地下鉄に乗り込むが、俺の頭の中は手動で開く扉に驚きでいっぱいだ。地下鉄は俺が唖然としているうちに駅を出発していた。扉は最後に乗り込んだ人が閉めてくれたのかどうかは判らないが、気付かないうちに閉まっていた。もし、扉が開いたまま地下鉄が走っているとしたら、ちょっと危険だ。

地下鉄の車内は夜行列車に乗っているような明るさしかない。市民の足としての地下鉄としては不足しているのではないかと思うぐらいの照明だ。しかも、窓は開きっぱなしで地下の変な空気が車内に入ってきている。さらに、地下鉄がカーブにさしかかると車両がきしむ音が聞こえ、車体が何かにぶつかって火花が散っている様子も見える。

なんたらランドのアトラクションだったら、恐怖感があって面白いのかもしれないが、この車両が現役で活躍できているのだから凄い。しかも、ブエノスアイレスの市民は日常生活の一部としてこの地下鉄に乗っているのだから、驚かされる。

そんな事を考えているうちに、俺が乗った古い車両の地下鉄は無事に次の駅に到着した。当然のように乗客が手動で扉を開けてから乗り降りしている。だから、乗客の乗り降りのない扉は駅に到着しても開かないままだ。そして、扉を開くのは手動だが、扉が閉まるのは自動で行われているのを確認できた。それを見ることが出来てちょっと安心できた。もし、扉を閉める事まで乗客に任せていたらラテン民族な乗客なのだから扉も開けっ放しで走ることになってしまいそうだ。

最初に乗った時には驚かされた手動で扉を開ける地下鉄も何度も利用しているうちに何も驚かなくなり、手動で扉を開けることが普通だと思うようになるのだから面白い。

ブエノスアイレスの地下鉄にはその他にも昔の丸の内線の車両を現役そのままで使っている路線がある。懐かしい感じがするのかもしれないが、昔の丸の内線なんて乗ったことのない俺には新鮮だった。それでも、椅子の配置や車内のレイアウトがどことなく日本の地下鉄っぽい感じになっているのには笑ってしまった。

東洋人の感覚と西洋人の感覚はやっぱり違いがあるんだなと、改めて感じた。

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