サルタツアー

2003年11月に行ったアルゼンチンのサルタ近郊の観光のご紹介。サルタツアーの時の資料は盗まれたのでありません。完全に俺の記憶だけを頼りにして書き起こしているので、事実と違うことがあると思いますが、その辺はご容赦を!!

ブエノスアイレスを基点にウルグアイやカラファテに行っている俺の次に行きたい場所はサルタだ。しかし、ブエノスアイレスで数週間の怠惰な生活を続けてしまい、なかなか腰が上がらなくなっている。気合とともにそんな生活に区切りを付けてサルタ観光に行く事にした。サルタ近郊には沢山の観光地があるそうなので、サルタを基点に手広く観光してまわる事にする。事前にブエノスいアイレスでサルタ近郊の観光情報や宿情報をかき集めておけばサルタ観光も効率よく周る事が出来るのだが、怠惰な生活で時間を浪費してしまっている俺は最低限の情報だけ持って夜行バスに乗りサルタに向った。

サルタは綺麗で雰囲気の良い都会の街だ。ブエノスアイレスで調べてきた宿にチェックインする。宿で少し休んで長距離バスの疲れを取ってからサルタの街を散歩する。バスターミナルで地図を手に入れたので、その地図を頼りにサルタの街を歩く。サルタの中心部は碁盤の目に整備されていてわかりやすくなっている。街の大きさもちょうど良いので歩いて観光するには十分だ。両替所やツアー会社などの俺が利用するだろう場所をチェックしながら街を散歩する。町の中心部にはサルタ大聖堂が建っていて、そこから少し歩いた場所にサンフランシスコ教会があり、街中が石畳で覆われている。1日中歩いていても飽きない街だ。

サルタ近郊の観光で俺が行ってみたいのはカファジャテ渓谷ウマウアカ渓谷雲の列車だ。ツアー会社を何件かはしごして情報を集める。雲の列車は観光列車なのでツアー会社に申し込まなくては乗れない。しかも、かなり人気があるので事前に予約をしておかないとチケットを買うことも難しいようだ。早速、チケットを購入するが数日後の雲の列車のチケットしか買うことが出来なかった。仕方がないので、列車に乗車するまでの期間を利用してカファジャテ渓谷を観光する事にした。カファジャテ渓谷はツアーに乗らなくても観光する事が出来そうなので自由に動き回れそうだ。

ウマウアカ渓谷はボリビアとの国境近くにあるようだ。サルタから直接行くよりもフフイから行く方が近いようなので、雲の列車に乗った後に行く事にする。

朝、サルタのバスターミナルからカファジャテ行きのバスに乗る。サルタからカファジャテに行く途中でカファジャテ渓谷を通って行くので、バスの中から渓谷を見る事ができる。バスは1番前の特等席に座る事ができたので眺めは最高なはずだ。サルタの街を出てからは普通の風景が続くが、しばらくすると渓谷が見えてきた。路線バスなので景色の良いところで休憩する事は出来ないが車窓から渓谷を満喫する事ができた。

午後にはカファジャテの町に到着した。宿を決めてのんびりとカファジャテの町を歩き回る。とても小さな町で、のんびりするには良いところだ。レンタルサイクルの店があり自転車でカファジャテ渓谷まで行く事もできるらしい。俺の泊まった宿でもレンタルサイクルをやっているというので宿で自転車を借りて、明日の午前中はカファジャテ渓谷まで行ってみることにする。

朝、宿で自転車を借りてサルタ行きのバスに乗り込む。バスはカファジャテ渓谷を通るので途中で降ろしてもらい、そこから町に戻るようにカファジャテ渓谷を観光する。日差しが強いので帽子と水は忘れずに持っていく。最初に悪魔の咽ぼとけという場所を観光する。ここはカファジャテ渓谷の1番の見所で古代の滝壺が枯れた場所なのだそうだ。おばちゃんが土産物を売っていたが、俺がいたときには誰も客が来ている気配が無く、少し淋しげな感じが漂っていた。

悪魔の咽ぼとけを後にして自転車を走らせる。道路は舗装されていて、全体的に少し降り坂になっているのでとても走りやすい。周りの風景は面白い地層がいたるところでむき出しになっている。柱のようにそそり立った岩等があり雄大なカファジャテ渓谷の風景が続く。そのうちに景色が単調になってきた。この辺りでカファジャテ渓谷が終わったのだろう。

日差しは強いままで、半袖のTシャツしか持ってこなかった俺は強烈な日差しで腕が日焼けして痛くなってきた。暑くても長袖を1枚持ってくるべきだった。お昼過ぎには宿に戻ってきたのだが、久々の自転車に加えて腕が日焼けしてしまったためにカファジャテ渓谷の自転車観光はかなり疲れてしまった。午後は宿で休む事にした。

せっかく自転車を借りているので、夕方からカファジャテの町の郊外の方にも行ってみることにした。少し小高い丘に登ってカファジャテの町を一望する。本当に小さな町で遠くのアンデスを見渡せて見晴らしが良い。帰りにワイナリーに寄りワイン工場ワイン博物館を見学してワインの試飲もさせてもらって宿に戻った。

のんびりとカファジャテの街と渓谷を観光したので次はカチと言う村に向う。カチはカルチャキ渓谷の中にある小さな村だ。カファジャテからは毎日バスは出ていないのでバスの日程に合わせてカチに行く。バスの車内から見るカルチャキ渓谷の景色は美しい。揺れる車内で車窓からの景色を楽しんでいるうちにカチの村に到着した。

カチの村はとても小さい。教会の前にある広場と小さな博物館以外には観光する場所は見当たらない。そんなカチの村から出発するバスは早朝の一便しかないのでカチに1泊する。夕方、時間をもてあましてしまいどうしようかと迷っていると、見晴らしの良い場所を見つけたので登ってみる事にした。するとカチの村と周囲のカルチャキ渓谷の美しい風景が広がっていて綺麗な夕日も見ることが出来た。思わぬところで良いものを見る事ができた。

次の日の早朝にカチからサルタに行くバスが出る。まだ、早朝と言うには暗すぎる時間にバスは出発する。そのような早い時間なのに途中の道で子供たちが何人も乗ってくる。しかも、子供たちは次から次へと現れるのだ。20人以上乗の子供たちを乗せて、まだ暗いカルチャキ渓谷をバスは走る。空が明るくなってきた頃にバスは小学校に到着したらしく、子供たちは全員降りていった。サルタに向うこのバスはスクールバスの役割も果たしているようだ。

子供たちを降ろしたバスはサルタへ向って走る。俺は途中のサボテンの国立公園で降ろしてもらう。サボテンが生えている広い高原がどこまでも続いている。その高原を突っ切るように直線の道が伸びていて、その高原の道をのんびりと歩くのだ。人工的な建造物は何も無いサボテンの高原を歩くのはとても気持ちが良い。遠くの方ではコンドルが飛んでいる。その向こうに雪が残るアンデスの山がそびえ立つ。そして、サボテンの高原がアンデスの麓まで続いている。聞える音は風の音だけだ。1人だけの世界を十分に堪能出来る。

数時間で高原の3分の2ぐらいを歩く事ができ、そろそろ疲れてきたので車を捉まえることにする。このサボテンの高原からサルタまでの移動は無計画なヒッチハイクを予定している。しかし、このサボテンの高原の道は殆ど車が通らない。30分に1台ぐらいしか車が来ないのだ。しかも殆どが貸切の観光ワゴンばかりなので、観光ツアーを利用しない俺のために止まってくれる気配など無い。予想以上に車が通らない事に少し焦りながらもヒッチハイクを続けながら歩く。

ヒッチハイクを始めてから2時間以上経過した頃にトラックが止まってくれた。荷台であれば乗せてもらえるというので荷台に乗せてもらう事にした。このトラックを見送ったら次は何時間後に車が止まってくれるかわからないのだ。

トラックの荷台にはとても小さな窓があるだけだ。狭くて埃っぽくて乗り心地はかなり悪いが贅沢は言ってられない。トラック自体もかなり古いらしく、登り坂では全然スピードが出ない。だが、せっかく乗せてもらえたトラックだ。サルタに連れて行ってくれるだけでもありがたい。

小さな窓から外の景色を眺めていると、トラックは風景の良い渓谷を通過している。どうやらこの渓谷がオビスポ渓谷なのだろう。小さな窓からしか見ることが出来ないので残念だが、窓に顔を近づけて外の景色を出来るだけ見るようにする。俺の気持ちなどまったく知らずにトラックは渓谷をゆっくりと降りていった。

俺がヒッチハイクしたトラックはサルタの手前の町までしか行かないという事なので、車がたくさん通っている交差点で降ろしてもらった。ここまで乗せてもらえただけで十分だ。金銭要求もせずにステキな笑顔だけを残してトラックは黒い噴煙を吐き出しながらゆっくりと走っていった。

そう言えば今日は朝食を食べただけで、それ以降は何も食べてなかった。近くの売店で軽食を買って食べる。ついでに売店のおばちゃんにサルタまでの行き方を聞くとサルタまで行く路線バスがすぐそこから出ているのだという。30分ほど待っているとバスがやってきたのでそれに乗ってサルタの街に戻った。カファジャテ渓谷からカルチャキ渓谷のカチの村を周って十分に観光して来ることができた。

雲の列車に遅れないようにサルタに戻ったので、もう少し日程に余裕がある。その間にサルタの市内観光をする事にした。サルタの市街地を見下ろせる場所にサンベルナルドの丘がある。しかも、頂上までゴンドラで行く事ができる。ゴンドラから見えるサルタの街の眺めにも興味があったので乗ってみることにした。ゴンドラの客は俺以外誰もいなく、観光地としては少し淋しさを感じる。ゴンドラからの見晴らしはとても良く、ゆっくりとサンベルナンドの丘を登っていく。丘の上からは整然と区切られたサルタの町並みを見渡す事ができ、教会や古い建物を見つけることが出来た。

ゴンドラを降りてきた麓には公園があってそこには小さな博物館が併設されていた。ついでなので博物館も見学する。入場料は安かったが展示物もそれなりのものしかなかった。

楽しみにしていた雲の列車に乗った。最後はかなり疲れたが、十分に堪能する事ができた。雲の列車の疲れを取ってから、ウマウアカ渓谷に向うためにサルタからフフイに移動した。フフイ州の州都のフフイもサルタと同じぐらいの都会だ。ここでウマウアカ渓谷とその他の観光地の情報を集めながら街の様子をうかがう。

フフイの街もサルタと同じように綺麗に整備されている。街中に博物館が数箇所あったので観光する。そのついでにツアー会社に寄ってウマウアカ渓谷とツアーの情報を入手する。カファジャテ渓谷と同じように幹線道路沿いにウマウアカ渓谷が広がっているようなので、路線バスでウマウアカの村まで行って渓谷を観光するだけで十分に満足できるみたいだ。

景色が見やすいように午前中にフフイを出るバスに乗ってウマウアカの村に向う。フフイの街を抜けたバスはウマウアカ渓谷の中を走る。左右の景色は切り立った断崖になった。何層にも重なった地層が露出している風景がバスの窓から流れるように見える。この景色がウマウアカ渓谷なのだ。カファジャテとはまた雰囲気が違う。バスは途中の村に寄りながらゆっくりと北上していく。バスが進んでいくにしたがってウマウアカ渓谷の奥に入っていくのだ。不思議な地層や山の形を楽しんでいるうちにウマウアカの村に到着した。

宿を決めて荷物をおろしてから、ウマウアカの村を歩いてみる。とてものどかで小さな村だが博物館が何軒かあり教会や時計塔もある。教会の周りにはお土産屋さんが数軒あり石畳で整備された高台がある。こんな小さな村だが観光の拠点になっているみたいだ。高台からはウマウアカの村を一望でき、村のむこう側に渓谷が広がっている。

近くの丘からの景色がとても綺麗だというので次の日の朝に行ってみる事にした。昼食と飲み物を持ってミニハイキング気分で出かける。ウマウアカの村の外れには丘の方角を示す看板が出ていたが、少し行くと道が判らなくなってきた。それでも、何となく正しいだろうという方向に進んでいくと道らしきものが無くなってしまい、周りはサボテンだらけになってしまったのだ。どちらに進んでいけば良いのか判らなくて困ったが、何となく見晴らしの良さそうな方向に向ってしばらく歩いていくと、また道が現れた。その道なりに進んでいくと見晴らしの良い場所に出た。椅子になりそうな岩があったのでそこに腰を掛けてランチタイムを取る事にした。眺めは最高だ。ウマウアカ渓谷の風景をじっくりと堪能する事が出来た。

ウマウアカに2泊してからフフイに戻る。サルタには寄らずにフフイからまっすぐにブエノスアイレスに戻る事にした。長距離バスのチケットを購入した後にバスの時間までフフイの街を散歩した。

時間に余裕を持ってバスターミナルに戻りバスが来るのを待つ。バスは30分ほど遅れてやってきて乗ってきた乗客を降ろし、そのまま折り返すようにブエノスアイレスに向けて出発した。バスは軽快に走っていたが夜中に検問で引っ掛かり止められた。バスに乗っている俺以外の乗客は全員アルゼンチン人のようだった。半分ぐらいの乗客がバスから降ろされて小屋に連れて行かれている。俺も降ろされて小屋で身体検査をさせられた。検査の目的は俺の所持金がどのぐらいあるのからしい。どうやらバスは悪徳警官の検問に引っ掛かったみたいだ。

寝ぼけた頭にスペイン語の説明を受けた俺は状況がよく解らなかった。そのうちに状況が理解できてきた。どうやら黄熱病の予防注射を受けていない人は、その人の持っている金額に応じて罰金を払わなくてはならないようなのだ。俺は1999年の12月に黄熱病の予防注射をエジプトで受けているので大丈夫だ。イエローカードを見せて説明するが悪徳警官が欲しいものはイエローカードの証明ではなく現金なのだ。

悪徳警官が最初に要求したのは500ドルだったが、だんだんと脳みそが働き出してきた俺は1ドルも払う気はないので日本大使館や弁護士を武器にして悪徳警官達と戦った。俺と悪徳警官達の壮絶なバトルの末に100ドル払ったらバスに戻って良いとボス警官が俺に言ってきた。それでも、俺はこいつらに金銭を払う気はまったく無い。最後に俺はボス警官の名前を聞いてみた。すると、ボス警官は諦めた感じでバスに戻ってよいと俺に言った。その瞬間に1ペソも払っていない俺の完全勝利が確定した。

しかし、後で確認してみると身体検査の時にお金を100ドルほど抜き取られていた。とても腹が立ったが抜き取られる隙を見せた俺のミスだ。高い授業料になってしまった。

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