オルロの鉄道

2003年5月にボリビアのオルロとウユニを結んでいる列車に乗った時の話のご紹介。アンデスの山脈の中をのんびりと走る列車の旅。

ボリビアのオルロからウユニまで鉄道に乗る事にした。列車は午後にオルロを出発して、真夜中の1時にウユニの駅に到着する。そんな時間に到着するのはちょっと不安だが、その時間に到着する列車しかないので仕方がない。

この列車は観光列車ではなく、現地に住んでいる人の生活の足として使われている列車だ。大きな荷物を担いだ行商のおばちゃんや子供をたくさん連れた家族連れやいろいろな人が乗り合わせている。ちょっと窮屈だが活気があって楽しい列車の旅になりそうだ。

午後にオルロの駅を出発した列車はのんびりとアンデスの高地を走る。褐色の大地が線路の両脇に広がり、その向こうにはアンデス山脈の山々が連なっている。今、鉄道が走っている場所の標高で既に3000メートル以上ある高地なのだ。これだけでもアンデス山脈の高さが思い知らされる。

夕方近くなってくると気温が急に下がってきた。そうしているうちに、列車からの景色が一転した。褐色の大地を走っていたはずの列車はいつの間にか水の上を走っていたのだ。列車の窓からの風景が水面に一変していた。まるで千と千尋に出てくる水面を走る列車のようなのだ。いきなり映画の世界に迷い込んでしまったようである。なんとも不思議な感覚だ。

実際には列車が水の中を走っているわけではない。線路だけが水面から出ており、線路の枕木のすぐ脇から巨大な水溜りが続いているのだ。線路の右も左も水溜りになっているので水面を列車が走っている感覚になってしまうのだ。列車は30分以上走っているが水面を走っている列車の風景は変わらないので、ひょっとしたら、巨大な水溜りではなく浅い湖なのかもしれないぐらいの大きさがあるのかもしれない。とにかく、幻想的な世界である。ひょっとしたら、映画で使われている水面を走る列車はこの列車からの景色をモデルにして製作されたのかもしれない。

優しい角度の低い夕日の光線が水面に反射して綺麗に光っている。遠くにフラミンゴを見ることが出来た。そのうちに夕日がアンデス山脈の合間に沈んでいった。太陽が沈んでからは辺りはゆっくりと暗くなっていき、気温も急に下がりだした。コチャバンバで買ったポンチョが早速、威力を発揮した。

暗くなってからは列車の窓を閉て、ほとんどの人が眠りはじめた。客車の中は威力のない電球が力なく光っている以外に明かりがないので眠るしかない。俺も寝たり起きたりを繰り返しているうちにウユニの駅が近づいてきたらしい。車内がざわざわとしてきたので俺も降りる準備を始めた。

列車がウユニの駅に到着したのは深夜の2時を過ぎていた。不安を抱きながら列車を降りると、俺のほかにも何10人かの乗客がウユニで降りた。ウユニの駅にはホテルの客引きが何人か来ていた。予約も何の下調べもない俺にはホテルの客引きが天使にみえる。一番信頼できそうな客引きを一瞬にして見抜き、その客引きについていく。

無事に宿まで連れて行ってくれ快適に泊まる事ができたが、就寝したのは3時を過ぎていた。これで明日からウユニ塩湖のツアーを探し始める事ができる。

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